mixiユーザー(id:297688)

2020年02月20日20:49

66 view

お金を知らない子(3)

稔はレストランに近付いて違和感を感じた。
異様な臭いであった。
それは建物の裏側から漂う生ゴミの異臭である。
気になっていたが
「とりあえず何か食べよう」と。


入り口に立つとドアが開かない。
何度かかかとを上げたり下ろしたり。
しばらくすると店員がやって来てドアを開けた。
「このドアは自動ドアじゃないの?」
「停電になったら困るから自動じゃないんだよ」
「山の中だから?」
「そうなんだよ。ところで一人なの?」
「はい」
「食事をするの?」
「はい。お願いします」
「お金は持ってるの?」
「お金って何ですか?」
「え〜?」


稔はレストランでは
「食事をお願いします」と言えば食べることが
出来ると思っていた。


「店長」
「何だ」
「この子はお金を持っていないんですけど」
店員はお金を持たない子どもの対応に困っていた。


店長が近付いて
「坊や、お金を払わないで食べるつもりだったの?」
「お金を払うって?」
「どうなってるんだこの子は」


稔は次元が違うことは知っていたけど、お金の話
はまったく知らなかった。
ましてやお金という物が無いと食事が出来ない。
何を話してよいのか稔には思い付かなかった。


信じてもらえるかわからなかったけど稔は本当の
ことを話すことにした。


「あの〜。僕はお金のない世界から来たんです」
「え〜!何言ってるんだ君は?」
店長と店員は驚いた。
「本当なんです」
これ以上聞いたところでどうにもならないと判断
した店長は「とにかく座りなさい」と稔に言って
店員は稔をテーブルに案内した。




0 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2020年02月>
      1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829

最近の日記

もっと見る