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2020年04月10日21:56

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第24章「平穏」

懐かしいこれでいきますか
https://www.youtube.com/watch?v=DvblTtGSk5Y

第24章「平穏」
ルカはサクラの墓の前にいた。
「ロレント様の話だと1年は戦争は無いらしい。
 束の間の平穏だね。」
井戸水を粗末な石に掛け手で磨く。
「兄ちゃんはまだまだだったな。
 また、誰も護れなかったよ。
 お前も護れなかった。
 ごめんな、サクラ。」
石の脇に置いてあった酒と華を置きなおす。
「グレック様はサクラの事を何歳だと思ってるんだろうな、
 ローズマリーはこのは様だね。
 この動物の皮は誰なんだろうか?」
少し前から酒、ローズマリーの他に動物の皮が墓に供えられるようになった。
「また来るよ、サクラ。」
帰りにギランに寄った。
兵舎でグレックが大きな体を小さくして机に向っていた。
「グレック様、お久しぶりです。
 何をなさっているのです?」
「ルカか、墓参りか?
 あれはいい酒だ。
 妹も喜んでるだろうぜ。」
「生きていたとしてもまだ11歳ですよ?」
「だからなんだ?」
「いえ、なんでもありません。
 それより何をしてるのです?」
机の上には沢山の紙片が散らばっている。
「これに魔法を入れてもらおうと思ってな、
 防御には自信があるが攻撃力が物足りないだろ?」
「一撃で城門をふっ飛ばしておいて何を言ってるんです?」
「もっと広範囲で、そう、一掃ってやつか。
 ロレントのファイヤーストームとかメテオストライクみたいな
 ああいうのをやりたいんだよ。」
「グレック様、あのような高位魔法はブランクスクロールに
 封入出来ません。
 ファイヤーボールが関の山でしょう。」
「そうなのか?」
「それに魔法はintelligenceに影響されます。
 成功率も威力もです。」
「力と体力なら自信があるが知力は自信ねぇな。」
「短所を伸ばすより長所に磨をかけるほうがよろしいかと。」
「いい事言うようになったな、稽古に付き合え、
 少しくらい時間あるんだろ?」
二人で外に出る。
木刀を構えた。
「久しぶりだな、こうして刃を交えるのは。
 少しは強くなったのか?ルカ。」
「これからお見せします。」
グレックは木刀をぶら下げたまま仁王立ちしている。
隙だらけだった。
地面を蹴る。
グレックの腹を打ち抜いた。
素早く反転して木刀を構える。
「いい動きだ、だが軽い。
 片手で見本を見せてやる。」
グレックが視界から消えた。
腹に衝撃が走る。
吐き気を抑え後に振り向き木刀を構えたが誰もいない。
「こっちだ。」
振り返る。
最初にいた場所にグレックが立っている。
「鎧を脱げばこれくらいの動きは俺にでも出来る、
 だが迅速さと破壊力は比例せぬ。
 だから俺は破壊力に磨きをかけた。
 ルカ、お前は何を磨き上げるのだ?」
「私は・・・」
地面を見つめ木刀を強く握った。
「迅速と破壊力を極めます。」
「俺の言った事聞いてたのか?」
「体現してる人はいます。」
グレックが溜息を吐く。
「このはか?」
「はい。」
「あいつは迅速タイプだ、
 キレた時だけ殲滅力特化になる。
 不器用なんだよ、だから死にかける。
 お前もそれは傍で見てきただろう?
 だが冷静沈着に戦況を見れるようになれば
 あいつは伸びる。
 ルカ、お前は素早さと防御力を磨け。
 俺の木刀を腹に食らっても平然としてられるくらいにな。」
「わかりました。」
自分の力では戦況を覆す事は出来ないのか。
護るしか出来ない。
だが何も護れていない。
将としての資格があるのだろうか。
グレックと別れグルーディンへ足を進めた。
日が暮れかかっている。
何かがいる。
大きな影。
巨大な斧をぶら下げていた。
「オーガか。」
オーガの攻撃くらい弾き返せなければ話にならない。
武器を収めて歩き続けた。
オーガが斧を振り上げる。
雄叫び。
ルカは斧だけをじっと見つめた。
腹にまともに食らった。
弾き飛ばされ木に背中を打ち付ける。
「ふんばりが出来て無い・・・」
立ち上がり歩を進める。
オーガが再び雄叫びを上げ斧を振りかぶる。
斧だけを見つめた。
その斧が地面に崩れ落ちた。
「何の真似なの?
 武器も構えず馬鹿見たいに攻撃されて。」
頭を矢で射抜かれたオーガの背中でこのはが呟く。
「すみません。」
「何かあったの?」
「何でもないですよ。」
「何でもないですって、何かあった奴が言うのよ。
 付いて来なさい。」
「このは殿、どこへ?」
「ギランで誰かに何か言われたんでしょ?
 話し相手が私じゃ不満かしら?」
「いえ、そんなことは。
 ありがとうございます。
 今回は私が持ちますので。」
「あら、ご馳走してくれるの?
 楽しみね。
 お酒も貴方に任せるわ。」
「あまり自信はありませんが。」
「重症みたいね?
 なら後で面白い物を見せてあげるわ。」
前に酒を酌み交わした店だった。
「麦酒を二つ頂戴。」
このはは一気に飲み干した。
「グレックに防衛力とかなんかで
 小言でも言われたのかしら。」
ルカも杯を空けた。
「お前は何を磨くのだと問われました。
 迅速さと破壊力を磨くと答えました。」
「馬鹿ね、相反する能力じゃない。」
「でも!貴女は両方持ってるじゃないですか!
 先の戦争、私はまた何の役にも立たなかった。
 鉄壁の防御力があるわけでもない、
 ニック様の様な鋭さも、貴女の様な身軽さや
 一撃の重さも、ロレント様の魔法も。
 オルガ様のような変身能力も無い。
 私には色が無いのです。
 ケレシャ様のような戦場を見る目も無い。
 凡庸、なんです・・・」
このはは2杯目に口を着けた。
「ならその長所を磨けばいいじゃない。」
「だから私には長所なんて無いのですよ。」
「何も特徴が無い、言い換えれば何でも
 そつなくこなせるって事でしょ?
 攻撃も防御も素早さも魔力も知力も戦場を
 見る目も、ちょっとづつ伸ばしなさい。
 そしたら貴方はなんでもこなせる。
 どんな戦局にも柔軟に対応できるようになるわ。」
「そうでしょうか。」
「随分今夜は卑屈ね、
 面白い物見せるって言ったわね。
 きっと驚くわ。」
椅子から腰を降ろし机をどかせる。
踵で床に魔方陣を描いた。
禍々しい気配を感じる。
「今度はどんな劣勢なのだ?」
ルカは椅子から飛び降りた。
サキュバスの女王が現れたのだ。
慌てて腰に手を這わせる。
武器は置いてきていた。
「あら、なんであんたが出て来るのよ。」
「お前が呼んだんだろ。」
このはは地面の魔方陣を暫く見つめる。
「間違えたわ。」
「間違えただと!私を誰だと思っている!
 冥府の女王なんだぞ!」
「誰だって間違いはあるでしょ?
 林檎の果実酒をご馳走するから座りなさいよ。」
「ふざけた女だ、この店の酒を全て飲み干してやる。」
「ルカ、大丈夫よ。
 呑み直しましょ。」
ルカはこのはとサキュバスクィーンに挟まれ椅子に座った。
「お前、こんな上官の下でよくやってるな。
 劣勢の時にしか呼ばぬし報酬も値切る。
 最低な女だぞ?」
サキュバスクィーンが話しかけてくる。
状況が理解出来ない。
「あんたこそ、手掴みで人を食らうのよ?
 下品ったらないわ。」
「この前の人間は不味かった。
 ろくな兵糧を食ってないんだろう。
 お前の血盟の人間は旨そうだ。」
「食ったら臓腑を引き摺り出すわよ?」
このはが笑いながら恐ろしい事を口走る。
「ここの酒は旨いな。
 今回はこの酒で許してやろう。」
「ですって、あなたのおかげで助かったわ。」
店の店主に語り掛けた。
「ど、どうも・・・」
店主の顔は引き攣っていた。
サキュバスクィーンがじっと見つめてきた。
「な、何か?」
「お前、いつまでその錠前を着けてるつもりだ?」
「錠前?」
「昔、何があった?その時の事をずっと引き摺っているな。
 自分を責め続けている。
 それがお前の枷になってるな。」
「占師みたいね、なんでわかるの?」
「下等なエルフとは違うのだ。」
「その下等なエルフに負けたのよ?」
「いちいち勘に触る奴だ。」
ルカは一気に杯を煽った。
「昔、妹を無くしました。
 沢山の勇気をくれたのに私は何も
 与えてやることが出来ませんでした。
 まだ乳飲み子で腹を空かせているはずなのに
 笑ってくれてたんです。
 その笑顔を護れなかった。
 私は、何も護れなかったんです。
 今も・・・」
嗚咽が聞こえた。
このはを見たが目を閉じて杯を傾けていた。
サキュバスクィーンが大粒の涙を流している。
「若いのに、苦労してるなお前・・・」
冥府の女王がまさかの泣き上戸だった。
「気に入った、お前となら血の契約を交わしても良いぞ。」
「ドラゴンナイトは召喚術使えないわよ?
 それと雇い主の許しも得ずに浮気しちゃ駄目じゃない。」
「苦労人だ、それにいい男だ。
 一緒に冥府にこないか?私の伴侶にしてやるぞ?
 953人目だが悪くないだろう?」
「節操ないわね、952人も旦那さんがいるの?」
「素数だぞ?最初の伴侶とお前でしか割り切れぬ数だ。
 特別だぞ?」
「ルカ、まともに聞かなくていいわよ?
 まぁそいつと伴侶になりたいなら止めないけどね?」
「あの!何もかも理解が追いつきません!
 このは殿は間違えたと冥府の女王を召還し、
 その女王は私の身の上話を少ししたら泣き出し、
 伴侶になれと。
 しかも953人目ってなんですか?
 素数?知りませんよそんなの!」
「この男、少し奏でると数多の色を出す。
 面白いな。
 益々気に入った。
 冥府も悪くないぞ?
 食事は人の血肉だがすぐ慣れる。」
「もう帰っていいわよ、オシリス。」
「私の名前を呼ぶな、殺すぞ。」
「一人づつしか召還出来ないのよ、
 もういいわ、オシリス。」
「だから、名前を呼ぶなといっただろう!」
サキュバスクィーンが手を伸ばす。
「さぁ、帰るぞ。
 ルカといったな、私の手を握れ。」
弦の弾く音。
差し出された手の平に矢が突き刺さる。
「ルカはあげないわよ?
 これは私の物。」
「すぐ気が変わるだろうさ。
 私の方が妖艶で美しいのだからな。」
矢を抜き、投げ捨てる。
「待ってるぞ?ルカ。」
そう言ってルカの唇に唇を重ね、地面に消えた。
「節操の無い女ね、サクラちゃんが見たらどう思うのかしらね。」
ルカは何も言わず支払いを済ませた。
兵舎までの道。
「あいつが顔を出したわ。」
このはが呟く。
月がルカを照らす。
「ルカ、少し時間を頂戴?」
このはが踵ではなく指で魔方陣を描く。
「これで間違いないわ。」
小さな女の子が現れる。
「振り返って見て。」
このはがその女の子に語り掛ける。
「兄さん・・・」
か弱く呟きルカに抱き着いた。
「サクラ・・・なのか?」
ルカはゆっくりそっと抱きしめた。
「サクラ、ごめんな。
 護ってやれなくて、腹も空かしてただろうに、
 ごめんな。
 もっと腹いっぱい食わせてやりたかった。
 もっと一緒にいてやりたかった。
 ごめんな、サクラ・・・
 こんな兄ちゃんでごめんね。」
ルカは只管抱きしめたまま謝罪の言葉を重ねる。
「兄さん、私は死ぬ運命だった。
 でもこうやって会えた。
 兄さんの事を恨んでなんかいないよ?
 これは本当の気持ち。
兄さんが心配でずっと彷徨ってた。
 このは様と勝手に契約したから成仏できないの。
 でもこうして会えるなら良かったと思ってる。」
「気持ちを、聞けただけでも、よかった。
 ごめんな、サクラ。」
「もう謝らないで、そろそろこのは様の魔力が尽きる、
 兄ちゃん、立派になったね。
 私の自慢の兄ちゃん。」
「サクラ、また会えるか?」
「ずっと見てるよ。
 きっとまた会える。
 このは様が護ってくれるから。」
サクラの体が透き通る。
「サクラ!」
小さな光の粒になり天に消えていく。
ルカはその光を掴む。
指の隙間から光が抜け、消えていった。
「サクラ・・・」
虚空を見上げる。
「死ぬ運命ってなんだよ・・・
 なんでサクラが死ぬ運命だったんだよ。」
ルカは暫く地面に座り込んだまま空を見上げていた。
「このは様、ありがとうございます。」
返事は無かった。
酒のせいなのか魔力が尽きたせいなのか
このはは寝息を立てていた。
このはを背負い歩く。
「このは様、今度は私が護って見せます。」
小さく呟いた。
部屋のベットにこのはを降ろす。
布団を被せた。
「このは様、いい夢を。
 おかげさまでいい夢が見れそうです。」
ランタンの火を吹き消す。
暗闇が覆う。
「あの時なんで私は貴女の物と言ったんですか?」
問いかけたがこのはは寝息しか返してこない。
「このは様、貴女もずるいですよ・・・」
ルカは部屋を後にした。





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コメント

  • mixiユーザー

    mixiユーザー2020年04月14日 14:41
    展開がおもしろい!それぞれのキャラが楽しいし重要ですね(^-^)取り巻きのおかげで、ルカの真面目キャラが引き立ちますね。

    サキュの登場、特におもしろいです!

    それで1つ気になるのは…

    動物の皮は誰がお供えしたの?
  • mixiユーザー

    mixiユーザー2020年04月14日 20:44
    いずれわかりますw

mixiユーザー

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