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日記一覧

 ソファーを勧めたがガメラは甲羅が大きくてソファーには座り難そうだったので、筆者は隣の和室に移動するように勧めた。ガメラは喜んだ。座布団に甲羅を降ろすと、調度、甲羅が背もたれの役目をして楽に座れるようなのだ。カメなのだから俯せでいるのが楽で

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 深夜二時を過ぎ、筆者が難しい専門書を読んでいたときのことだった。外が急に明るくなり、ベランダにズリリと重い何かが降りた音がした。周囲が少し熱くなったような気もした。恐々と窓を開けると、身長二メートルほどの巨大なカメが二本足で立っていた。カ

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 ビルの側面。一階部分には壁しかない。ところが、二階部分には、唐突に出っ張りがあり、その奥にはドアがある。出っ張りは厚さ二十センチほどのコンクリートの板のようなもので、広さは畳一畳を横にくっつけたぐらいに見えた。その出っ張りの周囲は何にも覆

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 風俗雑誌でも地方取材となると、やはり、一誌でその経費を負担するのは大変なので、数誌を合わせて取材に出る。そうなると一日に六件七件の取材をする。その時もそうだった。 午前十一時の女王様の取材がスタートだった。身長は低いものの女っぽい身体付き

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 ホラー雑誌の取材で地方のラブホテルの廃墟を訪れていた。地方取材は経費の関係で強硬取材が多い。モデルを含む四人で出かけたものの、予定が滞り、一部を分担して取材するということになった。 女性のモデルを使った撮影には人手がいるので、そちらにスタ

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 東十条の小さな木造アパートにころがりこんだ。部屋の持ち主は風俗嬢だったのだが、その当時、四十歳を過ぎていた彼女には風俗での稼ぎは少なかった。四十歳を過ぎて、彼女はなお自分は二十八歳だと言っていたが、それを信じるお客はいなかったことだろう。

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 新宿公園を抜けたところには、いくつかのラブホテルがあり、そのラブホテルをプレイルームとする派遣型の風俗店がいくつもあった。筆者はその付近の風俗店の取材のときには、たいていパリジェンヌという今はなき喫茶店で時間調整をしていた。ところが、その

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 この話をモチーフにいくつか作品を書いている。しかし、その元になった話そのものについて書くのは、はじめてなのだ。 筆者が、まだ、小学校五年生だった頃の話。アイドル時代の筆者のことを知らない人には信じられないかもしれないが、筆者にはアイドル時

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 幽霊の話を、いくら真剣に書いても信じてもらえなかったりする。ホラー雑誌の編集をしていた頃もそうだったが、幽霊の存在は信じてもらえない人には、本当に信じてもらえないのだ。筆者には幽霊の友人も多く、しばしば幽霊と会話もしているというのに、それ

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 信じられないほど体調を崩し、ああ、さすがに死ぬのかな、と、そう思っていたのが昨夜のことだ。何しろ食べることが出来ないのだ。食べているそばから咳が出て、無理に食べるとそのまま吐くということが起きた。苦しくて眠ることが出来ない。そんな中、幽霊

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 幽霊というのは、その多くがまじめな性格なのだ。そもそも、この世で悪のかぎりを尽くしたような人間が死んで後にも、まだ、生きている人間を苦しめてやろうと、それほどの熱意があるようなら、幽霊になどならないのだ。幽霊はこの世で騙され利用され苦しめ

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 幽霊も三人集まれば派閥が出来る、出る派、写る派、聞かせる派。そんなことが昔から言われている。幽霊の足元見れば剥がれる化けの皮。そんなことも昔から言われている。おそらく、幽霊の世界は幽霊の世界で、いろいろとあるのだろう。何しろ、幽霊といった

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 幽霊に友人が多いからだろうか。ホラー雑誌のネタには不自由しなかった。幽霊が幽霊の情報を流してくれたからだ。地縛霊で常に賑わっている交差点とか踏み切り、迷子の動物霊を人間に世話する霊ペット協会、幽霊と間違われて迷惑している妖怪たち、幽霊しか

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 今まで秘密にしていたのだが、実は、筆者には霊感がある。たくさんある。おそらく霊感がある人の五倍はある。霊感のない人は倍に出来ないので、比較出来ない。霊感がほとんどなくて霊感のある人は羨ましいと感じている人の十倍はある。もっとあるかもしれな

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 コモドが帰って行った。彼との会話に何かの教訓があるというものではない。彼は笑わないので、特別に親しくなったという感覚にもならない。それでも、コモドとの会話は心地が良い。帰ると寂しい。たまに、掴み合いのケンカになることもあるが、それも、また

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十月書き方課題小説
2018年09月13日15:38

 手の平にすっぽりと隠れそうなデザートスプーンを右手に握ったまま、重石代わりの本をどかして、紙の蓋を本体から上手にはがした。湯気があがり、安いコンソメの匂いが鼻をついた。大好きなコーンが入っているが、そのコーンは数えることがかんたんなほど少

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「私はねえ。善人というのが嫌いなんだよ。善人というものは無責任なんだよ。悪意というものには責任がある。悪いと分かっているのだから、それに責任があるのは当然だろう。盗むのも、暴力も、詐欺も、悪いと分かってやる。やるからには、捕まれば罰せられる

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 コモドは短い前足、本人が腕だと言い張るものを強引に組もうとすることがある。後ろ足、こちらは本人がただの足だと言い張るものだが、これも組もうとする。しかし、あまりにも短く、あまりにも太いので、なかなか思うように組めない。それでも、何度もそれ

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「戦争以外のことで集団でなければ出来ないことというのは何なのかね」「スポーツ」「あれは戦争を平和な競技にしたものだろう。まあ、それだって、集団で行動出来ない人には野球やサッカーは出来ないなどということもないだろう。試合中にチームの戦略に従っ

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 大きな口を窄め、長い舌をからめ、小さな小さな缶ビールを大切そうに抱えてビールを飲み、ジャーキーはこれでもかという大きさを口に入れ、くちゃくちゃといつまでも噛み続ける。繊細なのか豪胆なのか、脆弱なのか狂暴なのか、本当にコモドのことは分からな

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「一人でいたくないから、お前のところに来る。もし、そうだとしたら、お前は私を歓迎するのだろうか」「もちろん、大歓迎だよ」「私は、そうして歓迎されることに屈辱を感じるのだよ。暇つぶしの相手にはなりたくないし、暇つぶしの相手をさせようとする者だ

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「テレビゲームというのがあるだろう。お前もあれが好きか」「昔は好きでしたが、まあ、こんな年齢ですからね。すっかりやりません」 コモドはとにかく酒に強い。どれほど強いのかは筆者にも分からない。基本的に遠慮して飲まないようにしているらしいからな

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「ああそうだ。お土産があったのを忘れていた」 そう言うと、コモドは玄関先に置いたスーツケースのような物を取るために立ち上がった。身長は二メートルに及ばないが、日本の生活空間においては十分に長身で、狭い部屋で動くのはずいぶんと不自由そうだ。油

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「コモドはドラゴンの末裔ということだから、その仲間には小説を書いたりする人も多いのだろうね」 筆者も二足歩行で会話の出来る生命を人と呼ぶコモドに習って、コモドたちを人と称することにしている。「小説。そうした下品なものを書く仲間はいないだろう

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 コモドはゆっくりとコーヒーを飲む。一口一口、慎重に、香りを確かめ、唇で味を確かめ、長い舌先で苦味を確かめ、そして、口に含む。口は長いので、その中で、さらに、ゆっくりとコーヒーを味合っている。コモドの口にはたくさんの菌が繁殖すると言われてい

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「上着を脱いでもいいかな」 コモドはそう言いながら上着を脱ぐのだが、その脱ぎ方が変わっている。燕尾服の下の端を両手で持ち、そのまま身体を前に移動して袖を抜くのだ。それをきちんと所定の場所に掛ける。何しろ彼は礼儀正しいのだ。その風体や毒を持つ

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「こう暑いと汗さえかけないな」 トカゲに汗腺があるのだろうか。しかし、確かにコモドオオトカゲのコモドは、ときどき胸のポケットから美しい白のレースのハンケチを出して顔を拭くことがあった。あれは汗を拭いていたのかもしれない。 そのコモドの格好な

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 どうでもいいようなことを書いていたら、コモドオオトカゲのコモドがやって来た。コモドは人が悪いから、こっそりとやって来ては筆者のモニターをこっそりと覗いている。そして、後ろから「誤字が」と、つぶやくのだ。筆者は来たな、と、そう思って「ゴジラ

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