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日記一覧

 それは、ただのヌードグラビア雑誌だった。しかも、写真は日本のモノでもなかった。長い時間をかけて河原を歩いては、子供時代の筆者たちは、そうした雑誌を拾っていたのだ。たいていは雨露でページも開かないのだが、中には、新品同然のままに捨てられてい

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不眠症ホテル
2019年04月29日15:53

「相部屋になりますが、よろしいですか」 ホテルのフロントで最初にそう尋ねられたときにはずいぶんと驚かされた。しかし、それは最初だけだった。池袋の北口を出てしばらく歩いたところにそのホテルはあった。落ち着いた茶色の細長いビルで、そこがホテルと

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 どうしようもないほど貧しい街、どうしようもないほど貧しい親族、そんな環境で育つどうしようもなくダメな子供の一人が筆者だった。ところが、そんな筆者の従妹に優れた者もいた。どうしようもない場所でも奇蹟が起きることがあるのだ。彼女は小学生の頃か

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 素敵なママが経営するSМクラブだったのに、一年ともたずになくなってしまった。女王様としてのママの人気もそこそこだったし、女の子たちもそれなりに活躍していた。経済的にはつぶれるような理由はないはずなのに、あるとき、跡形もなく消えてしまってい

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 最近は、街の古書店というものを、ほとんど見かけなくなった。駅前には、まだ、数軒残っているようなのだが、昔は、駅から遠く離れたバスでしか行けないような街にも古書店はあった。そして、そうした古書店のほうが駅前の古書店よりも珍しい物が多くあった

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 ある小説の中に「Xシティファイル」という小冊子がこっそりと売られていると書かれていた。それはようするに「裏風俗情報雑誌」というわけなのだ。小説では、それは現実にはあり得ないようなファイルばかりだった。たとえば、和式便器に埋め込まれる女性の

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 小学校の図書室にエロがあるはずがない、と、そう考えるのは小学校の図書室を利用したことのない人と、まっとうなエロしか理解しない人だけなのだ。早くからアブノーマルな性に目覚めているような子供は図書室の虜となっているものなのだ。筆者は、今でも、

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 学校をサボって行く喫茶店があった。南武線の駅はたいていローカルで、駅前にはロータリーや駅ビルの代わりに商店街があったりした。そして、商店街の外れには、たいてい喫茶店があった。そして、それらは今のようなチェーン店の喫茶店ではなく、個人が趣味

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 それは、ただの推理小説だった。そして、筆者の中学生時代は推理小説が流行していたのだ。記憶は定かではないのだが、確か、犯人が小説では暴かれず、犯人とその理由を書いて出版社に送るというのまであったように思う。残念ながら、推理があまり得意でない

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 町工場の社長の娘がいた。中学一年の時だった。筆者はその工場に通っていた。その娘のところに通っていたというよりも、工場に通っていたのだ。工場には仕事があった。それが何の部品だったかは分からなかったが、同じ形の物を同じ数だけケースに入れるとい

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 宿泊、三日目の夜だった。二日目の徹夜だった。一緒にいたのは元アダルトモデルで現編集者の三十歳手前の女性だった。筆者よりも三つ四つ上だったと記憶しているが定かではない。事務所に寝泊りしているのは、二人だけで、小さな出版社の社長は夕方頃、一度

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 子供たちだけで冒険に出かけた。行ってはいけないと言われていた工場地帯。道はやたらと大きいが、人は歩いていない。スピードを出したトラックだけが行き交う。住宅はほとんどなく、右も左も工場ばかり。そんな場所なのに公園がある。道路際の樹木の葉は鼠

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 再現小説という企画について考えてみた。鹿鳴館サロンの感想会で、筆者はしばしば、ありもしないストーリーについて語っていたりする。普通の文学小説でそれなのだ。ようするに記憶違いが多過ぎるのだ。これが、ポルノ小説となったら、もう、実際の小説を発

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 元号というものについては、あまり考えたことがない。しかし、昭和、明治とよく会話に使うし、平成生まれという言葉も頻繁に使っている。そこで、明治のことは分からないので、せめて、昭和の変わった性風俗について書くという企画について考えてみた。戦後

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 老後について考えてみるという企画について、考えてみた。今は、まだ、若い人たちの持つような趣味を持っている。しかし、体力も気力も限界にきている。筋力は弱っているし、持久力などもうないに等しい。その上、集中力が衰え、思考力は風前の灯火なのだ。

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 極めて個人的なことを書くという企画について考えてみた。筆者の日常に興味のある人などいるはずもなく、また、筆者の私生活について知りたいと思う人もいるはずがない、さらに、大した知識も教養も表現力もないところの筆者の音楽評とか文学批評とか映画評

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 理論を中心として書く企画について考えてみた。どうせ、サロンは楽しく遊びたいだけの人がすっかりいなくなり、もはや青色吐息となってしまった。どうせ、ここまで来たのなら、硬い話をあえて避ける必要もないように思う。そこで、どうだろうか、このチャン

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 暗い企画について考えてみた。サロンに誰も来なくなると、面白いことに、悪意というものが渦巻くことになる。嫌がらせが増えるのだ。不思議なものだ。人間というのは弱っている者を攻撃したくなるところがあるようなのだ。サロンが弱ると、ここぞとばかり、

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 モテない編集者たちのことを書いて来た。どれも寂しい話だったが、同時に、空虚の中に熱のようなものを感じた。あの頃は、熱だけは妙に高かったのだ。貧乏に悩み、遊ぶ時間がつくれないとぼやき、モテないことで苦しんだ。しかし、いつも面白い企画ないか、

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 大阪取材の最中に東京に呼び戻された。取材先の風俗店とトラブルが起きているらしいということだった。緊張が走った。風俗店には表の顔もあれば裏の顔もある。裏の顔ともめればエロ本という類のもめごとに納まらない可能性があるのだ。筆者たちは撮影と取材

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二月の課題小説
2019年04月11日01:14

 皆さんの話を聞いていて、少し鈍い私にも、ここがどこなのかの検討がつきました。そして、私の人生は、最後の最後までツキがなかったんだなあ、と、そうも思いました。 幼稚園のとき、お遊戯会か何かの後、コーヒー牛乳が配られたことがありました。コーヒ

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「モテたいなあ」「編集長。若い女の子はべらせて、モテモテじゃないですか」「はべらせてるのか」「いつも違う若い女の子連れてるじゃないですか」 広告デザインをメインとして、雑誌編集の下請けもするプロダクションを経営する編集者の彼は、外見も悪くな

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 あの頃のゴールデンウイークは今ほど大型ではなかったように思うが、しかし、今よりも街は浮かれていたように思う。景気がよかったのだ。そのゴールデンウイークに筆者は、いかにも女にモテなさそうな編集長と二人、新宿三丁目の小さなオフィスでエロ本作り

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 編集者の中には、外見の良さとか金があるとか、ケンカが強いとかスポーツが出来るとか頭がいいとか、そうしたモテる要素がいっさいなにのに女に不自由していない男というものもいた。若い頃の筆者は、年配のそうした編集者たちを見て、自分も編集者として頑

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 少し外れるが東京二十三区の中にある小奇麗な2LDKのマンション。窓からは遠く川を眺めることも出来た。エロ雑誌編集者が住めるようなマンションとは思い難かった。 広めに設けられた限界を入ると形ばかりの廊下があり、左手にはダイニングキッチン、右

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 エロ雑誌編集者の全てがイケてないなどということはなかった。筆者から見てもいい男というのもいたものなのだ。彼は特にモテるタイプだった。背が高く二枚目、スポーツも出来てギターをやり歌も上手い。「モテる男はいいよなあ。モテる男になりたかったよ」

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「せめて掛布団だけでも二枚欲しかったよなあ」「編集長がいい人ぶって、エロ本の編集者は、こんなことに慣れているから大丈夫って、言っちゃったんですよねえ。そもそも、ホテル代もケチったわけですしね」 地方の風俗取材はエロ本としては経費がきつかった

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「モテたいなあ」 全裸のままアソコも丸出しでベッドに仰向けに寝て、その上、隣には全裸のまま男の腕枕にしがみつく女を抱きながら編集長はそうつぶやいた。撮影の片付けをしながら、筆者は驚いてベッドに寝る彼を見つめてしまった。全裸で彼にしがみついて

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「もう、こんな時間ですよ。大丈夫ですか。終電で帰らないと奥さんに叱られるんじゃないんですか」 筆者と編集長は新宿の居酒屋で安い酒を飲んでいた。編集長は結婚三年目。一年前には飲みに行くと子作りの話をしていた。「あれ、言ってなかったかなあ。女房

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「あのAV嬢のコーナー、今月で打ち切りにするしかないだろう」「人気ないですからねえ」 マニア雑誌編集長がライターとして編集部で仕事をしていた筆者の後ろに立って、ぼそりとつぶやいたので、そのまま、原稿用紙に向かって筆者は応えを返した。あのAV

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