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日記一覧

 怖かった。男は怒鳴りまくり、そこが新宿の喫茶店でなければ目の前の女を、いや、その女の隣で女を庇う筆者を殴りそうな勢いだった。どう対処すべきか、あらゆる方法が頭に浮かんでは消える。悪いイメージを打ち消すことに必死で、筆者の膝は震えていた。立

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 筆者がビデオメーカーを起こした時には、アダルトビデオの会社は十社に満たなかった。しかし、彼が筆者の元にやって来た時には、ビデオメーカーは五十社を超えていた。もしかしたら五十はオーバーかもしれないが、とにかく乱立していたのだ。売り上げは半減

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「SМクラブなんて出来たからSМは、どうしようもないほど退屈で下品なものになってしまったのよ」 筆者が三十代になって間もなくの頃、その女は六十歳になろうとしていた。まだ、日本にSМクラブなどなかった頃からSМプレイをして、まだSМ嬢など、ほ

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「みっともなく太るのが嫌なんだよ。痩せた惨めな老人になるのは、もっと嫌だしな」 そう言って、その男は、世田谷にあったキックボクシングのジムに通っていた。筆者がまだ二十代で、その男は五十歳に近かったと思う。アダルト専門のカメラマン。しかし、自

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 どこかの大企業の社長令嬢だったと、その女は言っていたが、どうせ嘘なのだ。育ちというものは、どんなにその後の人生が乱られたものいなったとしても、どこかに出るものなのだ。しかし、その女から育ちのよさは感じられなかった。 その女の人生は一言で言

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「この歌、止めないか」「この歌でやりましょうよ」 ああ、また、この会話かあ、夢の中で思う。使用済みのティッシュとゴムと紙コップが散乱した部屋に筆者はいる、今でも、ときどきみるところの、数十年前の筆者の生活を回顧したところのそれは夢なのだ。 

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「ねえ、気持ちいいの」 少し大きめの乳首がなければ、まるで少年のような胸の上にある筆者の顔を無表情に眺めながら女が言った。いつものことだった。旅行に誘うのは女だった。免許がないということで、おそらく筆者の車と運転が目当てだと思ったが、筆者は

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 寂しさの極限で訪ねるバーがあった。新宿歌舞伎町の古いテナントビルにあり、同じフロアーに並ぶ他の店のことは、いっさい知らなかった。高級そうなメンバーズのバーとかスナックがあるようなビルだった。実際にはバーだったのかどうかも分からないままだ。

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 修羅場だった。マネージャーという男が所属タレントである女を殴っている。止めに入っても、言うことを聞かない。羽交い絞めにされても、まだ、自由になる足で女を蹴っている。理由は、その日の撮影にスカトロがあることを女が聞いてないし、スカトロ撮影は

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 池袋北口からずいぶんと歩いたところにその店はあった。東京の池袋駅である。こんなに歩いたら別の駅が近くにあるのではないかと思うぐらい歩くのだった。北口のラブホテル街を越え、住宅街とは言えないが、歓楽街とも言えないような街に、その店はあった。

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 酷いプレイを好むが、美人だった、いい女だった。筆者が二十代前半のとき彼女は三十代。十歳も上のМ女を相手にSМをするのは滑稽に思えた。それでも、プレイの誘いは断れなかった。緊縛や鞭や蝋燭、浣腸もビデオ撮影の現場で嫌というほど体験していた。ゆ

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 筆者には音楽を聴く趣味がない。昔からない。驚くほど音楽を聴かない。聴かないのだから当たり前だが、音楽を買うことも、ほとんどない。それでも印象に残っている音楽というものはある。そうした音楽は外で聴いている。多いのは打ち合わせに使っていた喫茶

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 こんな企画をSNSで書いている人は最低だなあ、と、そう思うことがある。そんなSNS最低の日記について書くというのは、さすがに不味いだろうと思うので、それなら、いっそ、自ら、これはダメだろうという企画でSNSを書くというのはどうだろうか。 

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十一月の課題小説
2019年11月13日00:43

 郵便局はすでに使われていない。それは分かっていた。私が少年期を過ごした街は、その街並みをすっかり変えてしまっていたのだ。賑やかだった商店街でやっているのは、数軒の食べ物屋と飲み屋ぐらいのものだった。もっとも、平日の午後ということで飲み屋は

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 昔、と、筆者が言ったとき、最近までは三十年前のことだった。それが今は、四十年前のことになってしまった。四十年も前だと記憶は不確かなものばかりだ。自分のことでさえ、曖昧なものが少なくない。あの仕事をしていたのは二十歳だと思っていたのに、それ

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 人生には後悔しかない。そもそも人生というものは後悔を積み重ねるもの、という意味なのではないだろうか、と、そう思う。特に仕事では後悔が多い。書いたものの全てを後悔し、作った雑誌の全てが不満足で、ビジネスは全て失敗した。 どれもこれも後悔だ。

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 サロンをやっていると、ときどき、ギャンブルは負けたときが肝要なのだ、と、言われることがある。人は、負けると意地になってそれを取り返そうとして、取り返しのつかない事態を招くのだというわけなのだ。そして、それはその通りなのだと思う。 サロンは

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 一年に一度、時差ぼけのような奇妙な状態となる。もともと睡眠はまともでなく、続けて眠ることが出来ず、長くても四時連続で間眠ることがない。一日四時間しか眠れないのではなく、短く何度も眠るということをするのだ。そんな睡眠サイクルを生きているので

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夜明けの晩、その6
2019年11月07日00:42

 酔ってもいないのに徹夜明けの新宿で露出痴漢。そんなことも、あの頃にはあった。遠い昔の話なのだ。 新宿の外れ、新大久保に近い神社の向こう。あの頃にはドンキホーテなどなかった。その辺りまで行くと、さすがの新宿の夜も暗い。繁華街ほどの賑やかさは

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 小説には起承転結というものがある。これのないものは論外、これのバランスの悪いものは下手。しかし、三文ポルノ小説は少し違う。起結起結起結起結結が三文ポルノ小説というものなのだ。起結はどれほど繰り返してもいい。最後の起結結は、小説が確かに終わ

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夜明けの晩、その5
2019年11月05日15:36

 徹夜仕事をしている深夜は、元気に溢れ、明るい希望に周囲の何もかもが輝いているというのに、朝の四時を回ると、倦怠と不安に、周囲のあらゆるものは色を失って行く、そうしたものだった。眠気を忘れ、元気が空回りし、働かなくなった頭を引きずりながら仕

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 冒険とは言わないが、旅行であったとしても、目的地に着くまでには時間がかかるものだ。隣のコンビニにおでんを買いに行くことを旅行とは言わない。 そして、小説というものは冒険小説でなかったとしても、エッセイでなかったとしても、その基本は紀行文の

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夜明けの晩、その4
2019年11月03日00:43

 あの頃の新宿は違う顔とはいえ、昼も夜も明るかった。昼は自然の明るさで、夜には人工的な明るさがあった。どちらも新宿らしい明るさだった。そして、唯一暗い時間が朝だったのだ。ネオンが消え、ビルの灯りが消え、陽はまだささない朝。うすらぼけた街で浮

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 筆者は自分の文書の中に缶コーヒーを登場させることが多い。自分の過去を書くのに筆者はいろいろなところで缶コーヒーを飲んでいる。これを読んで、ああ、そういえば、と、そう思った人は、けっこう筆者を気にかけている。良きにつけ悪しきにつけ。ところが

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夜明けの晩、その3
2019年11月01日00:51

 終電のなくなった都内をとぼとぼと酔った足を引きずるようにして歩いていたことがあった。よくあった。月に一度はそうしていたかもしれない。終電の前には帰ろう、せっかく帰ることが出来る日なのだ。そんな日に酒を飲んで終電を逃すのは人間としてダメだ。

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