いよいよ暑さも過ぎたところで、夏の終わりにホラーというのはどうだろうか。もちろん、夏は終わっているのだからホラー雑誌の仕事で関わったようなホラーの話を書くつもりはない。ゆえに、幽霊もタイムスリップも超能力も占いも祟りも出てこない。あるのは、今も、なお、理由の分からないままになっている不可思議な風景だけだ。
たとえば、青木ヶ原の樹海の中でのアダルトビデオの撮影の時、まあ、樹海の奥まで入ったわけではないのだが、それにしても、そこにたいそう立派な将棋盤が置いてあったのは不思議だった。公園の覗きを取材している時のこと、井之頭公園の池のそばのベンチ、歩道からは死角になっているそのベンチに、きちんと畳まれたパンツ、ブラ、キャミ、ミニスカートがあったのだ。靴やブラウス、シャツのようなものはなかった。
ダムに沈む廃校でのアダルト撮影の時、教室の一つに、たった今まで酒を飲んでいたカップルがいたかのように、飲みかけのワインボトルが水の温んだクーラーに入っていて、ワイングラスが二つ置いてあった。
世の中は不可思議な風景で満ち溢れている。説明は出来るのかもしれないが、説明などしないほうが素敵だと思われる風景というものがある。
タイトルは「理由のない風景」とか「意味のない景色」というようなものでどうだろうか。
さて、いよいよ、休憩として挟んでいる六話が終わってしまった。何をはじめようか。
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