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2020年09月15日00:36

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もぬけの殻、おわり

 どの話も、まだまだ、書きたいことが多くあった。こうした場所ゆえに、一回二千文字、二回を限度と考えているのだが、四千文字ぐらいでは、どの話も書ききれるものではなかった、と、六話を書き終えた今、つくづく反省している。なんだか、話は、ギャランティをもらいそこねた筆者の間抜け話か被害者可哀想‎話になってしまった。文字数があまりに少なかったので、自分の悲劇を書くことを優先してしまったのだ。よくない話である。普段、自分のことしか書けないほど間の抜けた書き手もないものだ、と、バカにしているのだから、これは、困った結果である。
「僕はこんなに健気にエロ業界で仕事をしてきたんだ、だから僕を好きになってね、認めてね」と、心の底から叫んでいるのだから浅ましい限りでもある。
 この企画で本当に書かなければならなかったのは、儲かりもしないのにエロ本を出し続けていた出版社の社長たちの話であるはずだし、一攫千金を狙ってうっかりエロ本業界に入って来て、そのあまりの効率の悪さに驚いて逃げ出す山師たちの話であり、また、エロ本業界にしか行き場のない優秀な出版業者たちの話であり、また、性的な歪みの中に迷い込み遭難している作家たちの話だったはずなのだ。
 ビニ本ビジネスの旨味を求めて来た山師のような出版業者と、マニアのために、少しでもいい本を作りたいと本気でエロ本を出し続けた出版業者たちは、その本質が違っていた。筆者は前者が嫌いかと尋ねられると、必ず、その人たちはその人たちなりに筆者は大好きだった、と、そう答えて来た。それは本音だったのだ。
 女王様雑誌を作っていたとき、そのグラビア写真でオシッコを浴びせられている筆者を見て「これ、自分でやったんだ、こんなことまでさせて悪いなあ。もっと、金があれば男優を雇えるのになあ」と、本気でそう言った社長がいた。その人も夜逃げした。しかし、そんなマニアでもなんでもない人が興味もないエログロを我慢して作らせていたという、その悲劇はそれはそれで興味深いものだと筆者は思うのだ。
 今回の企画は、少し不完全燃焼だった。これはリベンジしたい。
 また、同時にこんなことも思った。もしかしたら、サロンは、このあたりに、大きな勘違いがあったのかもしれない、と。
 サロンは、皆で一冊を作ろうとしていた。協力して一冊を作ろうとすれば、どうしても思いは違ってくる。本気で何かを読み手に訴えたい人と、ただ、サロンの皆で仲良く遊びとして作りたい人との間の温度差が激し過ぎて、同じ本にならなくなっていまったのだ。
 上手とか下手ではないのだ。そんなものはどうでもいいのだ。ただ、あのエロ本時代には、皆で一緒に楽しく過ごすために文章を書くような人はいなかったということなのだ。これだけはどうしても聞いて欲しい、分かって欲しい、それだけで文章を書いていたのだ。文章の上手下手はいろいろだった。しかし、その熱量が同じだったのだ。
 一人一冊。サロンは、これを求めて行くべきだったのかもしれない。
 そんな方向違いの結論を持って、不完全なまま「もぬけの殻」という企画を、とりあえず終わりにしよう。
 そして、すぐに、この企画を復活させよう。
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