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2020年07月07日16:11

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ホラーでないけど不思議、その2

 京セラの一眼レフカメラを使用していた。あの頃は、マニアイベントの取材などが多くあり、取材記者が多く入るくせに、カメラをそこここに置くものだから、よく間違いがあったのだ。たいていはカメラのストラップなどで工夫していたが、筆者は、カメラは専門ではない、説明的な写真を撮ることが出来ればそれでよかったので、京セラという他の人が使用していないカメラにしておけば、そうした間違いが少なくていいと考えて、それを使用していたのだ。
 しかし、これは、あるプロカメラマンの助言ですぐに止め、やはりストラップで自分の物であると主張してキャノンのカメラを持つようになった。
 カメラをキャノンに替えてから一年ぐらい経った頃。筆者たちは、地方の小さな旅館を借り切ってマニア撮影をしていた。撮影班は三班あった。つまり、三つの編集部がそれぞれに撮影を行うのだ。そうすれば旅館を一軒借り切るだけの経費が出るからだ。
 そうした撮影には慣れていたので、たいした混乱もないまま、それぞれの班がそれぞれの撮影を終えた。
 筆者とは別の班の編集者が「カメラ、バックに入れて置きましたから、後で、確認してください」と、言って来た。カメラは大事なものなので、自らバックに収納し、確認して自分たちの班の荷物置き場に置いたはずだった。
「京セラなんか使っているの奥田さんぐらいだから、すぐに分かりましたよ」
「カメラバックに入ったの」
「ええ、入れて置きました」
 カメラバックにはキャノンのカメラが入っているはずだった。しかし、筆者は、取材にも同じバックを使っているので、取材の時のカセットレコーダーを入れるスペースが空いている。そこにカメラも入らなくはない。もともと、カメラバックはぎゅうぎゅうに詰めるものなのだ。
「あ、ああ、ありがとう」
 そう答えたが、不自然だった。不自然だが、何しろ撮影の撤収時は忙しい。結局、カメラの確認など出来ないまま、撤収、家に帰るまで、そのことを忘れてしまっていた。家に帰り、そういえば、と、カメラバックを開けて確認するが京セラのカメラなど入っていなかった。だいたい、持って行った記憶もないし、一年以上使っていなかったのだ。しかし、撮影現場にいたのは、いつものメンバーだ。それぞれがどんなカメラを使用しているのかは分かっている。確かに、京セラなどというおかしなカメラを使っていたのは、筆者ぐらいで、一年前にも一年後にも、他に見たことがなかった。では、あの編集者は何を言っていたのか。
 しかし、それを追求することも出来ない。カメラなどなかったと言えば、彼を責めているかのように聞こえる。筆者のバックには特徴があったので、それを間違えることも考えられない。彼に何を尋ねても、真相が分かるはずもなく、誤解されるだけで得がない。
 そんな分かり難いジョークであるはずもない。使われなくなった京セラのカメラの幽霊と考えると自然だが。しかし、カメラの幽霊など聞いたこともない。
 ただ、思い返すと、京セラのカメラを最後、どうしたのかの記憶が筆者には、なかったのだ。売った記憶も捨てた記憶もなかったのだ。そのことが少し不思議だった。
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