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2020年07月06日17:17

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ホラーでないけど不思議、その1

 数十年前の‌話になる。あの頃は、お台場が今ほど賑わってはいなかった。深夜などは、かなり大きな道路でも、人も車も、めったに通ることがなかった。しかし、レンズを覗けば、そこには大都会らしいビルの灯りが映り込む。野外露出撮影には好都合だったわけだ。
 公園には植え込みがある。そこに身を隠せる。車の接近はもちろん、自転車が来ても、すぐにそれを知ることが出来る。ただ、通行人は分からない。それを承知の上で、都会の灯りを背景に全裸で拘束された女を撮るのだ。あの頃は、まだ、それだけで十分にドキドキとさせられるグラビアになったのである。野外露出ビデオなどが過激になるのは、その数年後のことだったからだ。
 いくらマニア雑誌の撮影とは言え、通常ならモデルの女性も含め五人‎程度になる。車を二台出して七人、八人という撮影も珍しくはない。しかし、野外で全裸になるとなれば、そのまま犯罪であるから人数は出せない。また、そんな撮影にプロのカメラマンも使い難い。そこで、編集者二人とモデル一人の三人程度で撮影に出かける。フロントファスナーの脱ぎ安いワンピースなどを着せ、完全には脱がせないように工夫しながら上手に縄をかける。
 その上で、一人が女性につき、もう一人がカメラでそれを狙う。ワンピースを女性から渡されたら走ってその場を離れ見張りになる。ストロボを使うので長居は禁物。サッと撮っては現場を移動する。
 その時は筆者がカメラ。もう一人が女性についた。しかし、女性はワンピースを脱がなかった。その前に、二度、三度同じような撮影をして移動して来たのだから、今更、露出をためらうはずがないので、当然、彼女は近づく人を見つけていると思い筆者は周囲を見回したが誰もいない。もう一人の編集者も同じことをしたが、人を見つけた様子はない。
 女性が拘束された両手で公園の茂みを指し示す。街灯の下に別の全裸女性がいる。驚いた。シティホテルやラブホテルで別のエロ本やエロビデオの撮影隊とぶつかることは珍しくない。野外でも、代々木公園などでは、よくぶつかった。
 こちらのストロボに向こうは気づかなかったのだろうかと、様子を見ていると、全裸の女性は街灯の下で立ったり座ったりと忙しい。ストロボが使用されている様子はないが、高感度フィルムということもある。筆者は軽い悪戯心で、その女性にカメラを向けたストロボの光の届く距離ではない。別に撮影する気もない。ただ向けたのだ。ところが、ファインダーでは女性の姿を見つけられなかった。
 筆者は、不思議に思いながら二人の元に駆け寄り「何の撮影なんだろうな。まあ、全裸だから露出だろうけど」と、もう一人の編集者に言うと、彼は「白装束の着物だからホラー雑誌か何かじゃない」と、言った。モデルの女性はそれを聞いて「木に縄をかけてるんだから自殺でしょ。二人とも何落ち着いてるの、早く止めて来てよ」と、泣きながら言った。
 あわてて筆者は全裸女性のほうを見たが、そこには、もう誰もいなかった。怖いがとにかく確かめようと筆者は全裸女性がいたところまで一人で行った。モデルは恐怖で動けないし、彼女を残して二人で探索するというわけにも行かなかったのだ。
 しかし、その辺りに人にいる気配はないし、周囲にはそれこそ人などいない。錯覚。それしか考えられなかった。
 そう納得させて、こちらは野外露出撮影を続けた。モデルは自殺でなかったというだけで安心していて恐怖する様子はなかった。もう一人の編集者はホラー雑誌の撮影で間違いない、こちらに気付いて撤収したのだと確信を持って言っていた。確かに、それも考えられなくはない。あの頃、ホラーコミックもブームだったのだから。
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