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2020年03月29日00:14

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埃をかぶったポルノ、その2の1

 あれは中学三年の時だった。音楽室に授業のために入ると、いくつかの机の上には、まだ、前の授業の後、ピアノの前でおしゃべりをしていた女の子の荷物が残っていた。筆者がその内の一つに座ると、慌てたように駆け寄って来て簡素な机の上に置かれていた、ノート、教科書、リコーダーなどを胸に抱え、ペコリと、愛らしく頭を下げ、小走りに教室から出て行った。
 そこに自分の荷物を置こうとして、すぐに小さな紙片のあることに気づいたのだが、すでに女の子は教室を出てしまっていたし、入れ替わるように音楽の教師が入って来たので、筆者は、そのまま、紙片を音楽の教科書に挟んだ。
 紙片は、文庫本の数ページと思われた。小さいし薄かった上に、音楽嫌いの筆者は教書も開かずに、ぼんやりと窓の外ばかり眺めていたために、そのことを、すっかり忘れてしまった。
 思い出したのは、家に帰って、カバンの中の教科書を入れ替えようとした時だった。
 悪いことをしてしまったが、相手が一学年下の女の子であることは、何となく知っていたので、明日、返しに行けばいいかと気楽に考えながら、その紙片に目を落とし、筆者は衝撃を受けた。
 タイトルなどない。挿絵もない。見出しのようなものもない。しかし、それでも、なお、それがエロ小説であることが筆者には分かったのだ。
 たくさんの文字の並ぶ中に「羞恥の蕾」という言葉を見つけたからだった。エロ小説以外では、そんな言葉は使わない。文章には、前も後ろもなかった。小説の間の数ページらしいものだったのだ。他にも「敏感過ぎる蕾」「自分さえ見たことのない蕾」などと言うものがあった。とにかく、さっと目を落としただけなのに「蕾」という文字ばかりが目立つのだった。
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