ガメラは大好物の羊羹さえ、あまり食べないままに帰って行った。
書こう、筆者は思った。
楽しく酒を飲んで笑い合える相手なら、いくらでもいる。意味のない会話で笑い合える場所なら、いくらでもある。しかし、深刻に語り合える相手は少ない。意見をぶつけ合ったり、怒りや悲しみをぶつけ合ったり出来る場所も少ない。
そこまで他人に興味がないからなのだ。
ときどき、ガメラは愚痴をこぼしに来る。しかし、そんな時のガメラは陽気なのだ。ところが、筆者のスランプに訪れるガメラは暗い、深刻なのだ。自分のことよりも、他人のことでガメラは気落ちしてしまうのだ。
自分は辛い、自分は寂しい、自分は大変なんだ、と、自分のことでしか熱くなれない人が多い世の中、やっぱり、ガメラはどこか違うのかもしれない。
いつか、あいつらの雑誌を作ってみたい、そんなことを考えながら、ガメラが去って行った夜空を筆者はいつまでも眺めていた。驚いたことに、ギャオスは、まだ、上空を尻尾の切れた凧のように舞っていた。星に帰らない口実を見つけたことがよほど嬉しかったのかもしれない。筆者は気づかれないように、そっと窓を閉めた。きっとガメラも遠回りして帰ったことだろう。
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