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2020年03月26日15:32

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ガメラと企画を考える、その11

「昭和の頃のポルノの中には、ワイセツよりも、もっと別のものを描こうとしていたものが多いよな」
 羊羹を小さく切って口に入れながらガメラが言った。いつもなら、一本の羊羹を切りもせずに、そのまま齧りつくのに、やはり、今夜のガメラは、会話を優先して、羊羹の楽しみはその次と考えているようなのだ。もちろん、それは筆者にとって涙が出るほど有り難いことなのだ。しかし、同時に、ガメラのそうした過剰なまでの律儀さが少しばかり滑稽に思えたりもした。笑えるほど、まじめ、そういえば、そんな人って少なくなった。
「よく知ってるなあ。小説や雑誌だけじゃない。ポルノ映画なんてものにも、そうしたものが多かったんだよ」
「あれは何でだったんだ」
「規制だよ。悪戯に性欲を刺激しちゃいけない、と、言われたわけだよ。それなら、悪戯じゃなければ性欲を刺激してもいい、と、そうも考えられるだろう。だから、悪戯じゃないところを主張しようとしたんじゃないかな。女の悲しみを描きたい、だから貧乏ゆえに身体を売らなければならない女のセックスを描いているとかな。そして、今度はそれを利用して、自分の描きたいものをポルノでやる人たちも出て来たんだよ。たとえば、差別を描きたい、でも、そんな映画も小説も売れない。だから、売れるようにポルノを入れる。裸があれば金を出す人がいる。だから、それで、差別を描くというような」
「なるほどなあ。それで、お前も、悲しさとか、虚しさ、滑稽を自分のポルノで‏描いているわけか」
「いや、私のは、そうしたものが私の性を刺激するからであって、崇高な思惑はないんだよ。残念ながらね。私はどこまで行っても、三文ポルノ書き、なんだ。今ならワンコインポルノってところかな」
「それなら、それでいいんだけどな。こんな企画をやってくれねえかなあ。タイトルはそうだなあ、立心偏に涙、で、どうだ。性という文字の生きるに変えて涙を当てる三水の代わりに立心偏‎入れてもいいけどな」
 そこの問題じゃないだろう、しかし、性の陰にあった涙については書いてみたい。
 その昔、SМ雑誌の風俗嬢取材のページで、涙の理由という企画をやっていたことがあった。風俗嬢たちが本気で泣いた話を取材していたのだ。当たり前だが、М嬢が痛くて泣いたなんて話は一度も聞かなかった。だから面白かったのだ。
「その企画いいなあ。タイトルはともかく、ポルノの裏側にあった涙については書きたかったんだよなあ。私も、泣きたいほど惨めな思いは何度となくさせられたしな。いいよ、その企画、お前、本当は編集者になりたいんじゃないのか」
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