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2020年01月10日15:51

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あの時、SМは終わっていた、その12

 書きたいことは、まだまだ、たくさん残っている。好きだったSМクラブがつぶされたとき。他の出版社のマニア雑誌をつぶそうと画策している人を見たとき。SМパーティで見栄をはる男たちがいなくなったと感じたとき。SМ嬢がアルバイトで昼間の仕事をはじめたとき。SМ雑誌を作っていて活字なんか誰も読んでないんだからどうでもいいと言われたとき。SМイベントをやるなら何をやるかであって、どこでやるかじゃない、と、そう言われたとき。写真のない読者投稿は読まずに捨てていいと言われたとき。昔の写真なんか使わないから捨ててしまえと言われたとき。
 筆者自身にも、自分はもうSМ世界にはいられない、これ以上、ここにいるとSМを壊す側に加担してしまうことになる、と、そう思うことがあった。
 たとえSМ雑誌であっても、マニア性よりもワイセツ度が売り上げには大事なのだ、と、自分が言っていたとき。スカトロ撮影のときにモデルの女の子に着せるパジャマを小一時間もかけて選んでいる編集者と一緒に買い物するのが面倒だと感じたとき。マニア雑誌の文体について考えるために文学賞の作品は全て読むようにと言われて、それは嫌だな、と、そう思ったとき。
 まだまだ、いくらでもある。
 何よりも、グラビア撮影のロケハンを面倒がるようになっている自分にはショックを受けた。若い頃は、撮影よりもロケハンが好きだった。ここで野外露出が出来る。このホテルならあんなプレイが出来る。このストーリーなら、あそこの公園がいい、このストーリーなら、あの観光地がいい、と、そう思ってロケハンすることが何よりも楽しかったのだ。
 ところが、いつの頃からか、縛ってワイセツな状態を作れば撮影場所はどこでもいいと思うようになっていた。ストーリーよりも、ワイセツであることが大事になっていたのだ。そうなると、撮影の内容よりもモデルの女の子の美醜とスタイルと若さばかりが重要になってしまうのだった。撮影現場もSМイベントも明るく、モデルの女の子は上機嫌で帰るようになった。
 SМをもう一度、地下室にもどしたい、醜悪なストーリーにもどしたい、暗くジメジメとした人間関係の歪みにもどしたい、昼のSМを深夜のSМにもどしたい、そんな思いここめながら、もう一度、この企画をやりたい。いつになるかは分からないが。SМの火は、くすぶり続けていて、決して消えてしまったわけではないと信じたいから。
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