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2019年12月16日00:10

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アイさんコモドと鉢合わせ、その9

「酒もないのに夢を見たよ。コーヒーでウトウトするのは久しぶりだ。気が付けば深夜の二時だろう。酒もないのに、眠くなるなんてなあ。まったく、老いたものだ。何しろ、酒がないのに、こう、ウトウトとしてな」
「分かりました。出しますよ。ありますよ。こんな夜には、どうですか、バーボンウイスキーということで」
「日本贔屓の私にバーボンかね」
「メーカーズマーク・カスクストレングス」
「私が悪かった。反省してるし。眠気も醒めた。コモドが、ほれ、この通り、頭を下げて反省しておる。こんな夜はバーボンが似合うねえ。幽霊が出そうな夜はバーボン以外にないよ」
 勝ち誇ったように筆者はお酒の用意をした。勝ち誇りながら、どうして、自分がせっせと賄いをしているのかは分からないが、それはいい。コモドの喜ぶ姿は何よりの御馳走なのだから。もちろん、アイさんは洋酒派なのだ。何しろ、お洒落な女性なので。
「私はロック。いや、皆、ロックだな。この酒はロックがいい。ところで、人とは何かね」
 コモドは上機嫌で話をはじめた。まだ、バーボンに口は付けていない。酔っぱらうには、あまりにも早過ぎる。
「人という文字は二本足で立って歩くことを意味しているというのなら、私は人だ。もし、人間だけが人だという種の問題を出されたら、これは複雑になるな。人間の遺伝子がおそらく私にはない。しかし、二本足で歩き、こうして、日本語で会話もしている。私は日本には住んでいないが、日本に税金は納めている。それでは私は日本人ではないのか。たとえば、ギャオスな。あいつは日本生まれだぞ。卵から生まれたときは日本海らしいからな。ガメラも日本生まれらしい。まあ、あいつの場合、日本生産かもしれないけどな。ギャオスは日本で生まれたが日本で暮らしていない。税金も別の国に治めている。ガメラも同じようなものだ。では、アイさんはどうだ。アイさんの決め台詞」
「私は日本生まれ、日本育ち、日本死亡よ」
「これだよ。しかし、税金は納めていない。まあ、よく分からないが、しかし、日本に住んでいるようなものだろう。そのう」
「地縛霊」
 筆者が口を挟むと、すぐさま「失礼ね」と、アイさんがそれを否定した。
「まあまあ、そこは問題ではない。何をして人とするのか。何をして日本人とするのか。何をして地球人とするのか。もっと分かりやすく言おうか。では、何をして先生とするのか。何をして男とするのか。主婦とは何か。父とは何か。母とは何か。国民とは何か。本当は、そんなもの、何も分からないのではないのかね。遺伝子が男性なら、本当に男性でいいのかね。資格をもったら学校の先生、医者、弁護士でいいのかね。子供がいたら父であり母なのかね」
「その問題が突き詰められたところに私がいるのよ。幽霊がね」
 筆者には意味が分からなかった。もしかしたら、二口だけ飲んだメーカーズマーク・カスクストレングスに、すっかりやられてしまっていたからかもしれない。
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