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日記一覧

 誰もいなくなった編集室に残り、三日目になった。その三日間は、ほぼ徹夜だった。フリーの編集者ばかり三人で本を作っていた。しかし、二人がギャラの不払いが原因でいなくなり、筆者一人が残ったのだった。おそらく、そこに新しいフリーの編集者が雇われ、

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 マニア雑誌の撮影というのは、まず、スカウトというよりはナンパ師に近い存在の男がモデルとなる女の子たちの写真を編集者に見せることからはじまる。「この女の子なんてどうです。可愛いでしょ。これで、何でもありなんですよ。スカトロも大丈夫。もちろん

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 京セラの一眼レフカメラを使用していた。あの頃は、マニアイベントの取材などが多くあり、取材記者が多く入るくせに、カメラをそこここに置くものだから、よく間違いがあったのだ。たいていはカメラのストラップなどで工夫していたが、筆者は、カメラは専門

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 数十年前の‌話になる。あの頃は、お台場が今ほど賑わってはいなかった。深夜などは、かなり大きな道路でも、人も車も、めったに通ることがなかった。しかし、レンズを覗けば、そこには大都会らしいビルの灯りが映り込む。野外露出撮影には好都合だっ

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憂鬱な企画、その6
2020年07月05日00:04

 憂鬱な時の過去巡り、これが筆者の趣味の一つだったのだが、それは自分が憂鬱な場合であって、世の中が憂鬱な場合には、巡ろうという気力も失ってしまうのだと思った。いや、思い知った。 どこにも行きたくない。まるで外出そのものが極悪非道のように言わ

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憂鬱な企画、その5
2020年07月04日00:06

 人生において後悔していないことなど一つもない。全てのことで後悔している。もし、記憶があるなら、きっと、生まれた瞬間にも、ここじゃなかった、と、後悔していたのに違いない。 後悔は筆者にとって、ただの日常なのだが、中でも、大きなものが仕事での

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憂鬱な企画、その4
2020年07月03日00:08

 毎日が憂鬱な気分なわけだが、これは、こんな状況だからなのだろうか。冷静に考えると、サロンをはじめてから、ほぼ憂鬱で、あまり憂鬱でないことなどなかったように思う。酷いときには、今日もサロンに行くのだと思うとお腹が痛くなるという子供のような状

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憂鬱な企画、その3
2020年07月02日00:03

 筆者は起きるという夢をよくみる。あまりにも多くみるので、皆もそうだと思っていた。しかし、他の人は、起きるという夢をそれほどみていないようなのだ。 子供の頃には、朝、起きて、支度をして、家を出ようとしたらドアが開かない、そこで、まだ、寝てい

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憂鬱な企画、その2
2020年07月01日00:06

 あまり自慢出来るもののない筆者にも、自慢出来るものが二つある。一つは、朝令暮改。自分の意見や自分自身の取り決めたことを、かんたんに変える能力があるのだ。子供の頃から「‏言っていることが、コロコロ変わる」と良く褒められていた。もう一つ

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憂鬱な企画、その1
2020年06月30日15:31

 流行したのは「大統領のように働き、王様のように遊ぶ」というコピーだっただろうか。記憶は定かではない。いいコピーだと思った。大統領はけっこう遊んでいるだろうし、王様はそんなに暇ではないと思うが、それはいいのだ。どうでもいいのだ。 そいえば、

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バー小夜子にて、その12
2020年06月29日00:41

 不思議なことがあったのだということを思い出した。今から四十年近く前。筆者は小夜子というバーでユキコというファッションモデルとしか思えないような美女と賭けをしたのだった。 賭けは、深夜の公園で筆者が全裸になり、そこで自分のそれを興奮させるこ

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「月は凍っていたかい」 夏の夜だった。むしろ、月が熱帯夜に溶けてしまうのではないかと思うような暑い夜だった。「外は恐ろしいほど暑いですよ。もう、こんな時間だと言うのに、歩くと汗ばむほどです」 深夜二時を過ぎていた。しかし、涼しくなる気配さえ

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「そういやあ、あんたはエロ本を作っていたっけねえ」 四十年近く前に筆者が作っていたのはエロ本などと呼んでいいようなものではなかった。ビニ本、あるいは、ビニ本型のマニア雑誌という程度のものだった。それでも、それなりに少ない予算で必死に作ったも

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バー小夜子にて、その9
2020年06月26日17:14

「ママ、冷房、効き過ぎじゃないですか」 そういえば、その店は四十年近く前に通っていた頃にも妙に寒い店だった。夏の冷房は分かるが冬も寒かった。筆者はあの頃、冬にその店を訪れた時には、防寒のジャケットを着たままカウンターに座っていたものだった。

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バー小夜子にて、その8
2020年06月25日16:23

「なーんだ、また、あんたかあ」「仕方ないじゃないですか。この店、あまりにも寂しいんですから、別に、私が他のお客を追い出しているというわけでもないんですから。また、私ってことで、仕方ないんじゃないですか」 四十年近く前も、そして、今も、その店

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バー小夜子にて、その7
2020年06月24日00:08

 ママは酔っぱらうと自分は秘密結社の一員なのだという話をはじめた。これが面白かった。秘密結社は、時には世界滅亡を導こうと画策するものだったり、時にはエロの神髄を極めようとするものだったり、あるいは、魔術と呪術を行うものだったりした。ようする

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バー小夜子にて、その6
2020年06月23日00:03

「こんな店をやっているとねえ。安い女が来るのよ。そして、安い女探しに安い男が来るのよ。そいつらが悲しいほどエロを安くするのよ。古書店で、ひと山いくらのワゴンに乗せられた古本のようにエロがされるのよ」 そういえば、ママは酒が入ると詩の朗読をは

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バー小夜子にて、その5
2020年06月22日15:29

「そういえば、音楽が流れてませんね」 その店に筆者が通っていた四十年近く前には有線放送が流れていた。「音楽ねえ。こんな店で音楽を流していられる余裕はないってことなんじゃないの。何もかもが値上がりする世の中でね。エロだけは値下がりしたんだから

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バー小夜子にて、その4
2020年06月21日00:10

 昔、そのバーに通っていた頃にも、いろいろな意味で不思議な店だった。その店で遭遇したオカルティックな事件も多く記憶している。今、こうして四十年近くが過ぎて、あの頃のことを思い出すと、時間にも、いろいろな矛盾があったことが分かってきた。 その

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バー小夜子にて、その3
2020年06月19日00:02

「仕方ないねえ。今夜は特別だよ」 そう言ってママは冷蔵庫から焼きそばの麺を取り出し、野菜など用意していないものだから、唯一ある長ネギと、これまた、たまに気まぐれで作るウインナー焼きのためのウインナーを刻み、それで焼きそばを作ってくれた。「年

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バー小夜子にて、その2
2020年06月18日15:18

「なんだ、また、あんたか」「四十年前にも同じような台詞を聞きました」「そんなにやってやないよ。この店を引き受けて、ほんの二年だよ」 そこまで含めて、台詞は昔のままだった。「まさか車で来てるんじゃないだろうね」「まさか。意外と家の近くにあるの

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バー小夜子にて、その1
2020年06月17日00:23

「乾き物とチョコレートぐらいしかないよ」 酒の肴を要求されるとママは必ずそう言い返していた。その店のママではない。それは筆者が四十年近くも前に通っていた店のママのことだ。ママと言っても、あの当時で年齢は六十の前後と思われた。同じママが今も現

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暗い企画、その6
2020年06月16日00:15

 食をテーマとしたエッセイや小説を読む度に、食べるという行為をあまりに入念に書き過ぎるとエロになるなあ、と、そう思う。身をほぐすとか、むしゃぶりつくとか、口に含み舌先でころがす、と、何を表現しているのか誤解を招く表現が多い。もちろん、これは

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暗い企画、その5
2020年06月14日00:31

 雑誌は面白かった。およそ興味のあるところの雑誌を買ったところで興味のない記事は少なくない。読まない記事のあることを前提で一冊の雑誌を買っていた。それでも、時間が余ると、いつもなら読まないエッセイや記事を読んだりする。それが面白かったのだ。

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暗い企画、その4
2020年06月13日15:05

 喫茶店に入り、パソコンに向かうと、一時的に無我の境地に入ることがある。一心不乱となって小さなキーを叩いているのだ。その時、隣に女性が座った気配を感じたが、別に、喫茶店なのだから、それは珍しいことではない。気にもしないままキーを打ちながら、

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暗い企画、その3
2020年06月12日00:08

 車を降りて少し歩いたところで違和感があり、慌てて車に戻った。施錠の確認。施錠してあった。それでも違和感が消えない。ドアを開け、中を確認したところでマスクをしていなかったことに気付いた。ハンドル横のシフトレバーにぶら下がった白いマスクを取り

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暗い企画、その2
2020年06月11日00:10

 七つのエラー探しというゲームが好きだった。見慣れた喫茶店やショッピングセンターで、立体となった七つのエラーをやることがある。レイアウトが少し違っているからなのだ。本当はいくつあったのか分からなくなったテーブルの数。なくなった商品。なくなっ

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暗い企画を、その1
2020年06月10日15:25

 いつものように喫茶店に入る。たくさんあった席が間引かれている。それでは空いている座席がないかというと、意外なほど席は余っていた。恐怖を煽られ続けると人間は余裕を失うものなのだ。逆に言うなら、余裕を持つことによって人間は恐怖を克服出来るもの

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官能の裏側、その6の4
2020年06月09日00:03

 その夜まで、筆者は安いジンをコーラやファンタで割って飲んでいた。ジンは不味い酒だと思っていたからだ。しかし、老婆の出したジンはストレートで飲んで死ぬほど美味かった。あまりの上手さに、必然‎的に、舐めるような飲み方になってしまった。ゴ

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官能の裏側、その6の3
2020年06月08日15:50

「私がマニアだとか、元はSМクラブをやっていたなんて言うと、すぐに、SなのかМなのかって尋ねる人がいるんだよ。そして、私がどんなプレイが好きなのか、そう尋ねて来るんだよ。じゃあ。料理でフレンチが好きだと言ったら、何が好きか尋ねるのかねえ。ス

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