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2017年04月20日13:34

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◆貧困転落への第一歩「医療費の申請忘れ」はあなどれない

◆ 貧困転落への第一歩「医療費の申請忘れ」はあなどれない

【ダイヤモンドオンライン】 04/20
早川幸子:フリーライター




 貧困に陥った原因を探っていくと、最初は些細なことがきっかけだったりする。

そのひとつが、「病気やケガで医療費がかさんだ」というものだ。



 Aさん(55歳・会社員)は、急性心筋梗塞で倒れて入院。

手術で一命を取り止めたものの、その後も入退院を繰り返すことになった。



 「狭くなった心臓の血管を広げる手術を3回受け、その都度、病院の窓口で50万〜60万円の医療費を請求されました。 仕事も辞めざるをえなくなって、気がついたら300万円あった貯蓄が底をついていたのです」



 なぜ、このようなことになってしまったのだろうか。



 実は、Aさんは、健康保険に「高額療養費」という制度があることを知らなかったのだ。





● 高額療養費を申請すると自己負担は9万円に


 医療を市場原理に任せる部分が大きいアメリカとは異なり、日本の医療制度は公的な保険で運営されている。

有効性と安全性が科学的に証明された治療には健康保険が適用されており、誰でも少ない自己負担で治療を受けられるようになっている。



 健康保険が適用された治療費(保険診療)は、診療報酬と呼ばれており、全国どこで治療を受けても一律の価格に設定されている。

診察や検査、手術、入院費にいたるまで、全ての診療行為の価格は一つひとつ決められており、その患者に行った治療内容を積み上げて医療費を計算する。

ただし、患者の体調や病気の状態によって、実際に行われる治療内容には若干の違いが出るので、同じ治療を受けてもまったく同じ価格にはならない。



 Aさんが受けた心筋梗塞の手術も保険診療で、1回の入院にかかる医療費の目安は約187万円(全日本病院協会「疾患別の主な指標」(2013年1〜3月)」。



 これは医療費の総額で、窓口で患者が負担するのは年齢や所得に応じて、このうちの1〜3割。55歳のAさんの自己負担割合は3割なので、50万〜60万円程度だ。



 さらに、健康保険には医療費が家計に過度な負担を与えないように配慮した「高額療養費」という制度ある。

これは、1ヵ月に患者が自己負担する医療費に上限を設けたもので、現在、70歳未満の人の限度額は所得に応じて5段階に分類されている。



 一般的な所得(年収約370万〜770万円)のAさんの限度額は、【8万100円+(医療費−26万7000円)×1%】。

心筋梗塞の手術を受けて1ヵ月の医療費が187万円だったAさんの場合は、【8万100円+(187万円−26万7000円)×1%=9万6130円】が自己負担限度額だ。



 つまり、本来187万円かかっている医療を、健康保険があるおかげで、9万6130円で受けられるということだ。



 治療がもっと長引いて、直近1年間に高額療養費が適用された月が3回以上あると、4回目からさらに限度額が引き下げられる「多数回該当」という制度もある。 一般的な所得の人は、4回目以降の限度額は4万4400円になる。



 ところが、Aさんは高額療養費を利用できることを知らなかったため、窓口で50〜60万円の医療費を支払ったままになり、貯蓄を食いつぶしてしまったのだ。





● せっかくのおトクな制度も申請しないと利用できないexclamation


 健康保険をはじめとした社会保険は、国民を貧困に陥らせない「防貧機能」を備えているので、制度を正しく利用すれば、社会で起こるさまざまなリスクから自分の身を守ることが可能になる。



 ただし、こうした制度は原則的に人差し指申請主義だ。



 高額療養費の対象者には、加入している健康保険組合が「お知らせ」を送ってくれるところが増えているが、せっかくの制度も書類に記入して申請しなければ、利用することはできない。



 その結果、Aさんのように申請できるのに、申請し忘れて損している人がいまだに存在するのだ。



 「申請しなくても医療機関の窓口で高額療養費の手続きをしてくれればいいのに」と思うかもしれないが、医療機関は健康保険証を見ただけでは、5つに分類された患者の自己負担限度額は分からない。



 そのため、いったん窓口で1〜3割を負担したあとで、患者自らが高額療養費を人差し指申請して、限度額を超えた分のお金を払い戻してもらう手続きが必要になるのだ。



 ただし、現在は、高額療養費の所得区分を証明する「限度額適用認定証」を医療機関の窓口で提示すると、払い戻し手続をしなくても、最初から限度額のみを支払えばよくなっている。



 限度額適用認定証は、加入している健康保険組合で発行してもらえるので、入院することがわかっている場合は事前に入手しておくといい。



 高額療養費の申請期限は、診療を受けた月の翌月1日から2年間だ。

例えば、2017年4月20日に診療を受けた場合は、2019年5月1日までが申請期限になる。



 過去2年の間に医療費が高額になったのに、高額療養費の手続きをしていないという人は、申請できるかどうか健康保険組合に確認してみよう。





● 保険料を払った分だけメリットある社会保険


 高額療養費の他に、もしもAさんが知っていれば貧困に陥ることを防げたかもしれない制度が、健康保険の「傷病手当金」だ。



 通常、会社員が体調を崩したりして会社を休む場合は、年次有給休暇を利用することが多いはずだ。

付与されている有給休暇の日数は勤続年数によって異なるが、最大で年間20日間だ。



 病気やケガをして、有給休暇を使い果たしてしまうと欠勤になるため、「もう会社にいられない」と早まって会社を辞めてしまう人もいる。



 だが、会社員が病気やケガをして仕事を休んで、会社から給与をもらえなかったり、減額されたりした場合は、健康保険から傷病手当金をもらうことができる。

1日あたりの給付額は、標準報酬日額(1ヵ月の給与を30日で割った額)の3分の2で、会社から給与が支払われていても、この金額に満たない場合は差額を支給してもらえる。



 給付期間は、病気やケガで3日連続して休んだあとの4日目から、最長1年6ヵ月の間に実際に仕事を休んだ日数だ。

この制度があることを知っていれば、Aさんは慌てて会社を辞めることもなかったはずだ。



 貯蓄を使い果たすこともなく、傷病手当金の給付を受けながら病気療養をして、体調が戻ったら仕事に復帰することもできたかもしれない。



 他にも、Aさんが貧困に陥った原因としては、「助けてくれる家族や友人の存在がなかった」 「病気が長引いてしまった」など複合的な要素も考えられるが、健康保険の制度を知らなかったことも大きな原因であることは間違いない。



 本来なら使える制度の存在を、ただ「知らなかった」というだけで人生が大きく変わるということもある。



 毎月、給与から天引きされている健康保険料の数字を見ると、「高いなぁ」と思うかもしれない。だが、その金額には、病気やケガをしたときに3割負担で受診できるというメリットだけではなく、大きな病気やケガをしたときの治療費や所得保障も含まれている。



 保険料はただ取られるだけのものではなく、払った分だけメリットも受けられる。

いざというとき、自分が加入している健康保険からはどのような保障を受けられるのかをきちんと把握しておきたい。



 高額療養費や傷病手当金に限らず、「知らなかった」というだけで損してしまうことは、世の中に沢山ある。

国の制度は、誰もが平等に利用できるのが理想ではあるが、個人の知識の有無によって実際の保障が左右されている部分もある。



 制度を提供する側の意識改革も必要だが、今を乗り切るためには「知らなかった」で損しないように、国民も制度の内容を知っておくことが大切だ。

それが、いざという時、自分や家族が貧困から守るに陥ることを防ぐ知恵になる。




      ◇◇◇

早川幸子
フリーライター

1968年、千葉県生まれ。
明治大学文学部卒業。
編集プロダクション勤務後、99年に独立し、以後フリーランスのライターとして女性週刊誌やマネー誌に、医療、民間保険、社会保障、節約などの記事を寄稿。
現在、ダイヤモンドオンライン「知らないと損する! 医療費の裏ワザと落とし穴」、医薬経済社「ウラから見た医療経済」などのウェブサイトに連載中。
13年4月から朝日新聞土曜版be on Saturday(青be)の「お金のミカタ」を執筆。
「日本の医療を守る市民の会」発起人。



知らないと損する!医療費の裏ワザと落とし穴
国民の健康を支えている公的医療保険(健康保険)。
ふだんはそのありがたみを感じることは少ないが、病気やケガをしたとき、健康保険の保障内容を知らないと損することが多い。
民間の医療保険に入る前に知っておきたい健康保険の優れた保障内容を紹介する。
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