関フィルの攻めに攻めた今年のラインナップの中でも、とりわけ尖がったプログラム。がらがらじゃないか、と思ってたらあにはからんや。
大阪 ザ・シンフォニーホール
関フィル第305回 定期演奏会
藤岡 幸夫指揮 関西フィルハーモニー管弦楽団
(コンサートマスター 岩谷 祐之)
ヴァイオリン独奏 神尾 真由子
ウォルトン:ヴァイオリン協奏曲
ハチャトゥリアン:交響曲第2番 ホ短調 「鐘」
ウィークデーの水曜日、最もコンサートに出かけるのが困難なこの曜日に、万難を排してでも参加しようと思ったのは、僕にとってのこのプログラムの魅力ゆえ。でも、大阪の聴衆にはどうなんだろう、と思っていたのだが、蓋を開けてみればほぼほぼ満席の大盛況。
これは一体どういうことなのか?関フィルの営業がよっぽど頑張ったのか、それとも藤岡さんが長年かけて築き上げた固定ファンが律儀に詰めかけたのか、はたまたコアなクラオタが退去して関西一円から駆け付けたのか(どっちかというと、ぐすたふくんは最後の部類に属するものと思われるが)。
この二曲とも、下手したら関西初演に近いんじゃないかと思われる。少なくとも、僕がコンサートゴーアーになってからの16年間、一度も目にしたことはない。ということは、この機会を逃すと、二度とライブで聴く機会はない、ということになる。
そりゃ、聴きに来ますよね。うんうん。しかも、ウォルトンに至っては、神尾さんですもの。
そのウォルトン、期待に違わず、神尾さんの完全復活を印象付ける秀演。この日記に一時期、神尾さんの不調を訝しむ文章を何度か書いていた時期があったけれど、今日のウォルトンは、そんな時期なんてあったっけとまで思わされるほどの絶品の演奏。特に、3楽章、重音の嵐の名義性から、溺れるまでに艶やかな旋律の歌い上げに至るまで、広い広い振れ幅で聞かせる音楽は、これぞ「20世紀ロマンティック・コンチェルト」。バーバー、コルンゴルトのコンチェルトとこの曲で、三大なんとかといってもよさそうなもの、ですな。神尾さんのヴァイオリンは、むせ返るように濃厚で、エロティックなまでに肉感的。まあ、堪能しました。聴きに来て、本当に良かった。
ただ、バックにつける関西フィルのアンサンブルは、ウォルトン特有のトリッキーなリズム構造のトラップに躓く局面が目立ち、必ずしも万全という演奏では無かったのが若干残念。
それが、後半の「鐘」ではそれほど気にならなかったのは、やっぱりこちらの方の練習にかなりのエネルギーを割いた、ということなんでしょうね。
ハチャトゥリアンのこの曲、関フィルチラシのキャッチコピーにあるように、「轟音警鐘・・・阿鼻叫喚の音楽絵巻」(だれがこの日本語考えたんやろ、秀逸の極みですな)。とにかくすんごい大音響のオンパレード。キレッキレに切れまくったソ連オケのショスタコーヴィチに匹敵するほどのサウンドで、まさに暴力的といっていい。でも、そこに抗しがたい魅力があるのも事実で、その音を生で聞かせてもらったこと、ほんとに得難い機会でした。
藤岡さんに感謝。これからも、関西でこういうとがったプロを続けてもらえると、関西在住のクラオタとしては、誠に誠にありがたい限りであります。
でも、ショスタコが残ってこの曲が半ば忘れされていたのって、なんでなのか、全くわからないなあ・・・それはそれとして、エロスとヴァイオレンスを並べたような今回の演奏会、20世紀初頭作品が、普通に21世紀におけるオーケストラコンサートのプログラムとしてやっていける、しかもこの大阪で、ということを証明したという点で、興味深いものでした。
ログインしてコメントを確認・投稿する