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2020年07月04日12:03

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読書紹介1938●「炎帝 花山」

●「炎帝 花山」 萩耿介著 日本経済新聞出版社 09年版 1900円
 西暦969年〜1002年の物語。第65代帝・花山の生涯を描いた本。父は、第63代帝・冷泉である。冷泉は、物狂いの帝といわれた。正気と狂気が交互に立ち現われていて、花山は「あの冷泉の子」といわれつづけるのだ。
 10代で帝となった花山が、第1女御の?子に早くに死なれ、浄土への憧れを抱くようになる。政では、貴族の荘園を廃止し国の財政を豊かにしようとするが、摂政の藤原兼家に阻まれ、なに1つ理想の政を取り行うことができなかった。
 その花山の、「?子に会いたい」「浄土を見たい」との願いを逆手にとられ、僧・厳久に騙され闇雲に出家してしまう。厳久は権門家の兼家に取り入り、兼家の孫で第66代となる円融帝のために、花山を出家させたのだ。やがて厳久は、僧としての出世を遂げて行く。
 法王となった花山は、比叡山そして熊野で厳しい修行に明け暮れる。やがて、焼身供養を自ら実践。油を抱えて火を点けるが、油が少なかったことで生き延びるのだ。花山の激しさは、狂気じみていた。そこから一転、すべてを肯定する密教の「理趣経」の世界に入り、性愛を至上(悟りの)とする生き方で愛人を何人も持つようになる。花山の激しさは、その後「宗教」を利用した狂信組織をつくるまでになる。
 ここで、花山を騙した厳久との違いと類似点、2人の宿命が鮮やかに描かれていくところが、本書の味わいとなっていく。仏も浄土も信じていない厳久が、言葉を操り言葉だけを頼りにする姿が、花山との対比で人の世の真実とはなにか、を見させてくれるのでした。

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