●「海の十字架」 阿部龍太郎著 文芸春秋 20年版 1400円
本書は、戦国大名で初めてのキリスタン大名・大村純忠を扱っている。キリスタンになったキッカケは、それまでポルトガル船の寄港地だった平戸で宗教騒乱が起こったこと。それは生糸をめぐって、ポルトガルと日本の商人が喧嘩したことで始まり、これにポルトガル船の船員や松浦家の家臣が加わって、多数の死者が出たのであった。影に宗教問題があったからだ。
そのため、イエズス会が平戸から大村家の横瀬津に寄港地を移そうとした。純忠は、横瀬津をポルトガルに提供すれば「銀一千貫(約16億円」の税を取ることができる、と言われたのだ。これは、大村家の年収の10倍を超えていた。
そもそも純忠は、大村家には養子(6歳で)として迎えられた者であった。その地盤は弱く、古くからの大村家の家臣の謀反(領主を、旧大村家の血統に戻そうとの)に常に晒されていた。宣教師は、純忠が入信すればポルトガル船の戦力が彼を応援し、護ると約束するのであった。
ということで、当初は利に釣られて入信した純忠であったが、次第にキリスト教にのめり込んでいく姿が描かれていたのでありました。
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