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2020年02月17日10:32

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読書紹介1896●「このたびはとんだことでーー桜庭一樹奇譚集」

●「このたびはとんだことでーー桜庭一樹奇譚集」 桜庭一樹著 文春文庫 16年版 640円
 6編の短編が収められている。大学生、女高生、小学生、骨壷に入った中年男、31歳の派遣社員の女性、そして吸血鬼のような男が登場する。どれも、読んでいて胸がキュンとする物語ばかり。
 「冬の牡丹」では、お父さんのお気に入りだった長女・牡丹が、優秀な成績で大学を出て、大企業で頑張るが挫折。27歳で派遣社員となる。30歳真近になり、実家を出て安アパートで自立し、目立たないように生活している。今では、高校中退でできちゃった結婚した妹に「お姉ちゃんは、優柔不断なんだから」と馬鹿にされる日々。
 ある日、友人と飲んで酔っ払ってアパートのドアの前で倒れこんでいると、隣人が助け起こして部屋に運んでくれた。その部屋は殺風景でなにもなく、ただ本に溢れていた。その時嗅いだのが、古い猫の毛皮みたいな臭いで「悪くない」と思ってしまった。
 ということで、初めて隣人と知り合いになったが、この男は若いのか年寄りなのか年齢不詳の人物で、いつも鼻歌を歌って自由気儘に趣味にだけに生きている人物だった。ある日、薄い壁を通して諍いの声がした。隣室に押し掛けてきた40代の男が、「親父、いいかげんにしろ」と詰っているのだ。
 やがて隣人がこのアパートの大家で、息子がアパートを潰して開発しようとするのに反対して、アパートの一室に住み着いていることを知った。妻は死んだが金にも困らず、広い土地を所有していて、趣味だけにノホホンと生活しているのだ。
 そんな誰からも顧みられない日々を送っている女性と年寄りとの、軽妙なやり取りが楽しい物語でありました。

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