●「きいろいゾウ」 西加奈子著 小学館文庫 08年版 657円
各章の初めに、絵本「きいろいゾウ」の逸話を挟んで、都会から田舎にやってきた新婚のムコさんとツマさんの物語。
ツマは、周囲の生き物や花や木などの声が聴こえてしまう。そして黄色いゾウに乗って、小学生の1年間入院していた病院から、世界中を巡ったことのある少女だった。ムコは、背中に色鮮やかな鳥のタトゥーをした売れない小説家。アルバイトに、介護施設の事務をしている。
本書は、ツマの周囲の生き物や人々との交流と、それを別の目で描いたムコの日記という形式で進行していく。なんとも優しい物語。でも、ムコのタトゥーに隠された過去の出来事が追いかけてきて、ムコは東京に出かける。その間のツマの不安と、ムコの果たさなければならない使命が哀しく、また優しく描かれている。
これこそ、物語の醍醐味といえる小説。ゆっくりと、味わって読んでほしい本でした。
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