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2019年11月19日12:23

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読書紹介1870●「ソウルで逢えたら」

●「ソウルで逢えたら」 松岡圭祐著 徳間書店 05年版 1200円
 日本が韓流ブームでわいていた時代、主人公の明恵は、闇金に800万円の借金をしていた。同棲した男の間に男の子をもうけたが、彼は認知もせず逃げた。借金返済に迫られ、水商売ホステスに応募したが、どこでも断られてしまった。33歳で顔が暗すぎる。口角がさがって、まるで通夜のよう。安物のジャケットにタイトスカート、ハイヒールという身なりにも、必要に迫られた事情が感じられて、皆に断られてしまうのだ。
 「仕事をして借金を返せ」と迫る闇金業者から、「日本がだめなら韓国に行って働け」と。韓国語教室に3ヶ月通って、職探しに韓国に。こうして、6畳1間の下宿に住み着くことに。ここでは、韓国の庶民の状況が面白おかしく描かれる。
 職安で明恵は「日本語教師に応募すれば」と勧められる。すると、翌日にも有名な芸能プロ(KEP)からオハーが。それも時給7000どういうのだ。KEP社長じきじきの誘いであった。社長は明恵に、「言葉だけではなく、日本人の習慣やものの考え方も社員に学ばせたい。私は日本を尊敬している」というのだ。
 ところがこの社長は、日本軍の強制収容所生まれで、両親は収容所で失っていた。韓国でも有名な「反日思想」の持ち主だったのだ。そのため韓流ブームに乗り遅れ、KEPは斜陽化を辿っていたのだ。日本語教師というのも嘘で、明恵がやらされたのは、韓国人が望む女性タレントのリサーチの結果創り出されたCGIのバーチャルキャラクター(KEPが死地回生のため創り出した)の代役だった。明恵が、コノキャラクターに似ていた(入念な化粧を施せば)からであった。
 ということで、ミステリアスなタレントというふれこみで人気を博した明恵(日本人であることは絶対の秘密)は、韓国1のアイドルとなった。ただし、どんな取材も会見にも姿を見せないままであった。
 やがて、社長の嘘には理由があったことが次第に明らかになる。約束の3ヶ月がきて、突然の引退宣言をした明恵は日本に帰国。かって、人生を変えることのできる機会はほんのわずかしかなく、自分にはけっして訪れないと思っていた明恵。自分は変わった、変えることができたという自信を身につけていたのでありました。

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