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2021年10月15日19:06

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ザ・エージェント


「ザ・エージェント」、観ました。
これ観るの3回目です、確か。
1996年のロマンティックコメディドラマで、監督、脚本、制作
キャメロン・クロウ、主演がトム・クルーズ。
他、キューバ・グッディング・Jr、レネー・ゼルウィガー、ケリー・プレストン、ジェリー・オコンネル、ジェイ・モーア、ボニー・ハント等です。
これ、すごいです。
アカデミー賞の作品賞、主演男優賞、脚本賞など5部門にノミネート、その中でキューバ・グッディング・Jrが助演男優賞を受賞。
ゴールデングローブ賞にも3部門にノミネートされ、トム・クルーズが主演男優賞を受賞してます。
その他、放送映画批評家協会賞に3部門ノミネート、レネー・ゼルウィガーがブレイクスルー賞、ジョナサン・リプニッキが子役賞と、グッディングが助演賞、MTVムービー・アウォーズに3部門、トムが男優賞・・・と、まだまだ続きます。


たまきはこれを最初に観た時から、大好きな映画でしたけど、何故かレビューを書かなかったのです。
トムは大好きだったし、レネー・ゼルウィガーの大ファンでもあったし、ストーリーも俳優たちの演技も最高によくて、大好きな映画。
でもレビューを書くには至らなかったわけね。
トムの映画はみんなそうだったのですよ、たまきにとって。
どれもみんなよくて、何度でも観たい感じなのに、レビューを書くほど、その問題に対して、言いたいことが特にない、と言う感じだったの。
だけど最近、彼の映画はみんなとてもポップに見えて、実はけっこう深いテーマを含んでいる・・・単なるエンターテイメントではない、とわかってきました。
そういえばポップカルチャーと言うのでしょうか、ポップな作りになっているものは映画、漫画、アニメであれ音楽であれ、軽く見てしまいがちだけど、その中に見落とすべきではない、重要な問題が含まれている作品が、けっこう多いのですね。
だけどそれを深刻なドラマに仕立てないで、ポップに仕上げて観る人を楽しませる、というエンターテイメント精神には感服します。
ちょっと話はずれるけど、だいぶ前に、「今や日本の漫画は、純文学の小説以上に内容が深い」と何かに書いている人がいましたよ。

この映画はコメディなんですね。
トムはアクション俳優のイメージがすっかり定着してますけど、彼はコメディがものすごく上手いんですよ。
びっくりしちゃいます。
通常のコメディアンと違ってーーというか人による、と思うけどーー「これはコメディですよ。面白いんです。面白いでしょ?」という風に、滑稽な顔やしぐさなんか、一切しない、とても真面目に真剣に生きてる人を演じる・・・何にでもむきになるんです。
これは脚本が、とか監督が、という問題じゃなくて、彼がそういう人?性格なんだろう、とたまきは思ってます。
不思議なキャラの持ち主、というかね、根が真面目な人なんですよ。
何に対しても真剣に真面目に取り組む・・・その姿が傍から見ると笑えるんですね。
そして最終的に、多くの人の深い共感を得ているんだ、と思います。
名前も同じ、トム・ハンクスもそのタイプだけど、トム・クルーズの方は更に真面目と真剣度が高い。

この映画のテーマは、ま、どの国も同じだ、とは思うけど、アメリカの「商業主義」、利益の追求だけに走りがちな会社、というものに対して、人間らしい生き方、働き方、人との関係の持ち方を追求した、ある誠実なスポーツエージェントの話なんですね。
例えばスポーツ界の話だと、「マネーボール」もいい映画でしたけど、あれは巨大な資本金でもって球団にいい選手を集め、勝利を得続ける球団に対して、貧乏球団が、画期的な方法で少ない予算で勝利を勝ち取る、という痛快な話ですね。

でもこちらは、スポーツ選手を「商品」と看做し、高い契約金でスポーツチームと契約させ、そこからごっそり手数料を取って効率よく利益を上げるエージェント、そこで働き続けることに、突然嫌気がさして、会社でのいい地位と給料を投げ捨てて、自分のエージェントを設立、大変な苦労をする道を進んで選んだ男の話です。

言っておくけど、この人「ジェリー・マグワイア」(トム・クルーズ)は会社で非常に有能、高給取りで、大事にされていたので、それに対して何の不満もなかったのです、当然ながら。
でも、会社の「徹底した利益の追求」という方針の陰で、大事なものが忘れ去られていないか?
ということに、ある日気が付いて、このまま同じ道を進み続けることがもうできない、と思ってしまったのです。
それは、ある選手が、怪我や病気のせいで、休養を取らずに、このまま試合を続けたら死んでしまう、という時、いつもの調子で(それが会社の方針だから)、
「いやいや、君はスーパーマンなんだから続けられるよ。
休むなんてあり得ない」と、思い切りの笑顔で言う姿勢ーーアメリカ的でしょ?ーーに、最初は何も感じていなかったのが、その選手の子供にそれを見抜かれて、「お前は最低な奴だ」と
言われ、突然何かが大きく彼の中で変わってしまったのです。
まあ、実を言うと彼はその気持ちを「スポーツエージェントとはこうあるべきだ」という声明文にしてパンフレットを作り、会社にばらまいた為に首になったんですけどね。

面白いですね。
子供に「お前は最低だ」と言われて180度考え方を変える?
そんなことあり得ない。
それはほんのきっかけに過ぎなかったので、彼の心の中に、実はずっとあった違和感だったのですね。
選手を消耗品と看做して、高く売れるうちは過酷に働かせ、そのせいで健康はガタガタになり、選手寿命を短くしてる。
まだ若いうちに選手はお払い箱になり、その後の彼の人生については知ったこっちゃない、というわけ。
これを目の隅では見て、心の奥では何かを感じながらも、それを自分で押し殺して、利益だけを追求すれば会社では高く評価され出世し、尊敬もされ、高給取りになれる、という。
まあこれは、この業界に限らず、そしてアメリカに限らず、資本主義社会の宿命、というところはあるでしょうね。

電化製品でもパソコン、スマホ・・・そんな会社で「消費者に対して誠実でなければ」なんてやり方をしてたら会社は潰れちゃいますよ。
数年ごとに買い替えてもらわなくちゃ儲からない、と思ってるの?と言いたいこと、よくありますよね。
わざと簡単に壊れるように作ってるじゃん、と思うこと。
そういう社会にあって、「誠実に働く」、嘘のない、人間的な関係を、商品である選手と作る、などという考えは、何かのおとぎ話のようで、危なっかしい感じがします。

でもこの話には、現実のモデルがいるんです。
それはレイ・ステインバーグ( Leigh Steinberg)というスポーツエージェントと、ティム・マクドナルド(Tim McDonald)
というフットボール選手の関係で、それにインスパイアーされて、キャメロン・クローはこれを脚本にしてるんですね。
この映画を観ればわかるけど、選手を消耗品と看做したりせずに、技術面から精神面、お金の面(彼が養わなきゃならない家族を含めた)まで親身に相談に乗り、固い友情関係を作り上げて選手を大スターに育てていく話なんです。
現実の彼らについてはわかりませんけど、この映画では、ロッド・ティドウェル(グッディング)はかなり態度がでかくて、ファンサービスという面でも、まったく頓着しない、自分の能力だけは高く評価し、その自分に対してのオファーが低すぎる、と常に不満たらたらの人だったのです。
でも会社を立ち上げたばかりのジェリーには、クライアントは彼一人しかいないの。
元の会社の同僚であったドロシー・ボイド(レネー・ゼルウィガー)はちょっと楽天的な性格、というかお人よし、ジェリーの「理想のスポーツエージェントとは?」という(会社を首になる元凶となった)声明文に痛く感動、共鳴し、ジェリーについて来ちゃった、という人。
彼女に、労働保険も保証できない状態で、会社は当然赤字、それでもドロシーはひたすらに彼を信じてーーーっていうか、惚れちゃって?ーーー「大丈夫、何とかなる」と、彼のそばを離れようとしません。
ジェリーの方もこんな絶望的な状態でも自分を信じてついてきてくれる・・・つまり理解者は彼女一人しかいないので、二人は強い絆で結ばれ、愛し合うようになります。
彼女は離婚したシングルマザーで、レイ・ボイド(ジョナサン・リプニッキ)という、4歳くらいの男の子がいますが、これがもう、めっちゃ可愛いんです。
ジェリーも忽ちこの子の虜になって、ドロシー以上にこの子が好きだから結婚したの?と思うくらい意気投合しちゃってるんですね。
第一、レイが、一目でジェリーを気に入って、最初からすごく打ち解ける姿を見て、ドロシーは感動して泣いたりしてるんです。
「この子が父親以外にこんなに打ち解けるのは見たことがない」と言って。

そんなこんなで、苦労しながらもジェリーはたった一人のクライアントであるロッドを大事にし、ロッドのでかい態度に相当頭にきながらも、親身になって「ほんとに高く評価されたかったら君の能力を試合で出して見せろ。」「君はファンに対して冷たすぎる。そっけない態度じゃなくて、もっと彼らに好かれるようにしろ。」などとアドバイスし続けます。
彼の家に行って、家族とも打ち解けよう、とまで努力を続け、やがて彼の努力が実る時がやってくるんですね。
ついに一流選手に必要なスポーツ精神や、ファンサービス、スポーツマンシップを身に着けて、ロッドが大人気スターになる瞬間は感動的です。
二人はいつもの口喧嘩を止めて大きくハグします。

ジェリーを首にした会社のジェリーの部下だったボブ・シュガーと、会社のクライアントの一人が一緒に彼らの姿を見ていて、その選手が
「あの二人の関係、いいな」とつぶやくと、ボブが、その選手にハグしようとして、選手が腹立たしそうに肘鉄を食わせるのが面白かった。
まあ、大きなスポーツエージェントに、彼らは商品として、非人間的な扱いを受けてるからね。

この映画を観てて感動するのは、こういう社会にあって、「仕事で真に誠実な、人間的な関係を築く」などというのはあり得ない、そんな甘い考えでは、負け組になってしまう、という通常の在り様に、「本当にそうかな?」という、一石を投じているからではないか?と思います。
勿論、特にアメリカでは、お金が全てを支配していて、真に人間的な働き方、人との関係の築き方なんて、考えるのも時間の無駄、という面はありますよね。
能率よく利益を追求し、会社を大きくしていくことが全て、という。
でもその中で、こういう人がたった一人でもいて、小さな成功でも収めるのを見ることで、「勝ち」にばかり走って砂を嚙むような索漠とした会社経営の中に疑問も持たずに働いている人達が、そこに大きな、何か大切なものを見たように感じ、それによって社会全体が見えないところで徐々に、大きく変わっていくのじゃないか?という気がします。

この映画は、そういうことを考えさせてくれる、という意味で、大きな意義のあるものに仕上がってますね。
しかもとにかく、俳優たちがみんな大変な演技力で、あっけにとられるくらい上手い!
どうしてこうも面白いんだ!という感じ。
コメディとして最高なんですね。
でも笑ってるうちに、最後には泣けてくるくらい感動しちゃう、という。

トム自身に、こういう、コメディドラマのできる俳優なんだ、ということを思い出して、またドラマものも大いにやって欲しい、とたまきは望んでいます。

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