右手にその後による予定の店用のワイン５本、左手に埋蔵さんへの道具を持って、店に。
まだ１６時５５分。【開店前に店に客を入れると・・・。】との教えを守ってと思っていると新聞記者らしい人に、古いお客さんだったろう夫人が二人出てくる。
暖簾と行燈を揚げていないので、営業の客ではないようだ。入り口で待つ。
少し引き戸の間を見ると、埋蔵さんが通路の椅子に座っているのが見える。
入ることにする。地元の某会社会長の姿が見える。創業以来のお客さんで粋人としても著名な人物だ。ご高齢で最近は見かけなかったが、駆け付けたらしい。店の隅に祭っている【おがる大明神】に手を合わせると帰って行かれた。さすがと思った。以前、毎年正月に配られる縁起物の手ぬぐいをため、１２本あれば浴衣が縫えるという事を言うと、その年の七夕にさっそうと、仕立て上がりの浴衣を着こなして登場され、大いに受けた。
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