まだ小学生になる前だったと思う。
母の実家へ訪れるため、特急列車で母と移動をしていた。
たしか約4時間くらいその電車に乗っていなければならない、長い道のりだった。
幼かった私はその時間を持て余し、またそれを消化する手段も持ち合わせているハズも無かった。
なので、ちょこまかと車内をうろついたり、冷水を飲みに行ったり、トイレに行ってみたりして気を紛らわせていた。
そのうち、車両の接続スペースにある乗車口で、一人たたずんでいる男性から声をかけられた。
どこに行くのか、一人で来てるのか、どこに住んでいるかなどと他愛もない内容の会話だ。
話の流れで、この列車の食堂車の話題になり、私は行ったことが無いと言うと、では連れていってくれるという話になった。
その時の心情としては、嬉しい云々よりもまず、その可否については自身で判断がつかず非常に戸惑ったというのが正直なところだった。
一旦、母親の元に戻り、行っても良いか聞いてくる旨、その男性に伝え、母のいる座席にまで戻った。
男性に食堂車に誘われた話を母に話したところ、母はそれをするっと了承した。
私としては少し意外だった。
何かしらの警戒や疑いについて吟味する必要があると感じ、その審判を母にゆだねたのだが、そのへんは全く気にも留めていない感じで、快く許可が出たからだ。
子供の私はそれ以上は深く考えず、男性の元に戻り、母から了解を得たことを伝え、男性と一緒に食堂車に行った。
私が頼んだのはハンバーグセットだった。
メインのプレートにはハンバーグと副菜、他にもコーンスープと皿に盛られたライスもあったような気がする。
今でも大好きなメニューだ。
ところが私はそれを全部食べ切らずに、ほとんど残してしまった。
実は乗り物酔いがきつくて、そのとき頭痛がしていたのだ。
普段なら皿をなめる勢いで完食するのに、それを上回る体調不良が本当にやりきれなかった。
素直に男性に頭が痛くてもう食べられないと告げると、男性は優しく無理をせずとも良いと言ってくれた。
食堂車を離れ、二人で母のもとに戻り、母と私で改めて男性にお礼を言った。
その後、男性はまた車両の接続スペースに戻り、私は元の座席に戻った。
せっかくごちそうになったハンバーグセットを食べきらなかった申し訳なさと、あの男性は一体何だったのだろうという疑問があの時からずっと記憶の中でリフレインしている。
それからだいぶ長い年月が過ぎたつい先日、ふとあるイメージが脳裏に浮かんだ。
あ、あの日のあの男性は、俺だ。
そうか、いつか私は小さな男の子を食事に連れて行くのだな。
どうやら魂に時間軸は無いようで、このミッションがいつどのように果たされるのかは分からないが、何故か根拠も無く、強い確信だけが胸中にある。
※このカードの中でひらめきを感じたものを一枚選んでください
※78枚のカードに宿る精霊たちが次の内容で選んでくれた貴方をしばらく守護します。お守りを持つように選んだカードを意識の奥に沈めておくとよいでしょう。
左(ワンドの10):殺到するオファーに対して大胆に決断しなければならない時の勇気を後押し
中(ワンドの7リバース):がんばればなんとか目標を達成できるギリギリのラインで孤軍奮闘していることについて成し遂げる価値がある事を気付かせてくれる
右(THE DEVIL):自己の現状を見つめ返して自分自身に打ち勝つ意思を強化
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