mixiユーザー(id:2716109)

2022年05月28日23:50

28 view

本棚489『琉球の風(下)』陳舜臣(講談社文庫)

 下巻では、琉球王国が薩摩に占領された後の時代が描かれる。戦いの後、尚寧王たちは本土に連れて行かれ、見物人の中を罪人の「ひきまわし」のように江戸城まで向かった。その後、琉球を実質的に島津の土地とすることを示す掟十五条が島津から示される。島津の琉球侵攻が、他国への侵略ではなく、附庸国の奉仕怠慢に対する懲罰とする文書を、琉球王国の三司官のひとり謝名親方は歴史の偽造と考え、署名を拒む。真実を後世に伝えるために、命を賭して抗った謝名親方の生き様が胸を打つ。

 島津の厳しい支配下に置かれながらも、次の世代の人びとが琉球を未来を担ってゆく。琉球の宝である文雅の世界、音曲の世界を突き詰めようとする啓山。その兄、啓泰は海を越えた交易の世界へと進む。薩摩からも明からも独立して交易により南海の島々を結ぶ、「南海王国」建設の夢。苦難の中にあっても、新たな世界へと進み、自身の生を燃焼させる若者たちの姿が爽やかな読後感を生んでいる。
0 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2022年05月>
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293031