本棚488『フォト・ストーリー　沖縄の70年』石川文洋（岩波新書）

　琉球王国への薩摩の侵攻、琉球処分による明治日本への併合、凄惨な沖縄戦、敗戦後のアメリカ支配下の生活。そうした苦難の先に現在の沖縄がある。沖縄返還50周年を迎え、美しい海や音楽、美味しい食べ物といった明るい部分だけでなく、基地問題など残された課題が取り上げられる機会が増えているが、一過性のものとしないことが肝要だろう。本土が攻撃や事故のリスク、騒音問題などから免れ、平和と繁栄を享受できているのは、沖縄の重い負担によるという事実を常に心に留めておくことが必要であり、多くの写真と共に、戦争と基地を軸に沖縄の七十年の歴史を描く本書はそのよすがになる。