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2022年01月15日13:36

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本棚454『読書のちから』若松英輔(亜紀書房)

 「言葉に飢える、という表現がある。たしかに言葉は心を潤す。危機にあるとき人は、些細な一言によって、消えそうだったいのちの炎をよみがえらせることさえある。」

 一般的なブックガイド、読書案内かと思って手に取ったが、言葉を巡る切なる想いが随所に現れ、読むという行為の本質、暗闇の中の一条の光ともなる言葉の持つ力、ひいては生きることそのものを問うような本だった。

「私たちに必要なのは、ありもしない「答え」めいたものではなく、たしかな人生の「手応え」なのではないか。」
「叡智は、利己を含む土には根付かない。そこには利他という養分が不可欠なのだろう。」
「多くの人は、自らが、さまざまな営みを通じて叡智の芳香を世に振りまいているのを知らない。そして、そうした芳香が私たちの日常に広がっていることも見過ごされている。」

 著者の人生体験に基づく、こうした生や知にまつわる箴言のような心に残る言葉があれば、読書についての文章もある。良書の定義の一つとして、「読み終わらない本であること」を挙げているのが印象的だった。人生の限られた時間の中、読みきれないほどの無数の書物の大海で、たくさん新たな本を読むよりも、何度も再読したいと思える本にどれだけ出会えるかが大事なように思えた。それはきっと、「邂逅」と呼ぶのが相応しい奇跡のめぐり逢いなのだろう。人との出会いと同じように。
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