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2021年12月31日19:57

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本棚449『日本史の論点 邪馬台国から象徴天皇制まで』中公新書編集部編(中公新書)

 「邪馬台国はどこにあったのか」、「鎌倉幕府はどのように成立したか」、「明治維新は江戸の否定か、江戸の達成か」、「戦争は日本に何をもたらしたか」、「戦後日本はなぜ高度成長できたのか」

 古代から、中世、近世、近代、現代まで、日本史における約30に及ぶ論点·謎を明らかにする。冒頭に挙げたように、すべての論点は問いかけの形で示され、暗記ではなく、様々なエビデンスに基づき本質を考え抜く歴史の面白さを伝えてくれる。昔の学説から最新の研究成果まで渉猟し、新書とは思えないほど多数の文献が引用されている。
 
 これまで通説と思われてきたことへの反証も斬新である。鉄砲による戦術や城郭の変化は長篠合戦のはるか前から始まっていたこと、現在の日本社会の特質やシステムを考えると明治維新よりも戦国から江戸への変化の方が重要だったこと、江戸時代はすでに個人レベルでは身分間移動や地域間移動が行われる流動的な社会であったことなど、目から鱗の指摘が数多くなされている。
 中でも、官僚制は各国の制度を踏まえて明治期から始まった印象があったが、江戸時代に既に近代官僚制の萌芽があり、家柄ではなく優れた人材を登用する仕組みが確立していたことに驚いた。日本と異なり多くの国々にとっては第二次世界大戦が「現代」の分かれ目ではないといった、日本史のみにとどまらない世界との比較の視点も興味深かった。

 これらの主張には反論もあろうが、多様な史料を駆使してできるだけ真実に近づいていこうとする歴史学の魅力、静的なものではなく、動的な歴史の魅力が感じられる。巻末の百冊のブックガイドも更なる探究へと読者を誘ってくれる。
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