立法、行政、司法と並ぶ「第四の権力」と呼ばれるマスメディアは、時に政治権力を監視し、時にその影響力によって自らが政治的主体となる複雑な顔を持つ。
本書は「変化」、「比較」、「実証」の3つのキーワードの下、議題設定やバイアスによりマスメディアが世論に及ぼす影響、政治の方がメディアの論理に合わせて展開される「政治のメディア化」など、政治とメディアの関係を巡る最新の研究の見取り図を示してくれる。
意外だなと感じたのは、現在のようにメディアが多元化し、多くのひとが多種多様な情報源に接することが可能になると、色々な情報や意見の比較を通じてより客観的で冷静に政治を見る目が養われるのではなく、逆の事態が進むということ。選択肢が増えると、保守でも、リベラルでも自身の考えに沿うメディアばかりに触れ、元々の考えが強化され極端になるという(レストランのメニューが「本日のランチ」1種類から多様化すると、肉好きは毎日肉料理ばかりを食べるという比喩が分かりやすい)。
本書を読んで、本当の意味での「客観報道」というのは実現できないのだろうかと思った。「本紙は〇〇の候補を推薦する」と宣言するアメリカの新聞まではいかなくとも、日本の新聞や系列のテレビはリベラルか保守かの色分けは明確になされるし、どの記事を、どういう大きさで取り上げるかという隠れたバイアスも存在する。
日々の慌ただしい生活の中で、意見の異なる新聞同士を見比べて、より客観性を高めていくのは難しい。そうであれば、一つの新聞の中で、与党(又は野党)の言うことにはすべて反対と言うのではなく、個々の政策毎に綿密に検証し、是々非々で賛否を判断していけないのか、一つの新聞の中で、多様な意見を尊重し、それらをぶつけ合い、より客観的なものへと磨いていけないのか。そうしたことをつらつらと考えていた。
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