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日記一覧

 O・ヘンリーといえば、どんでん返しや意外な結末が有名だが、物語のプロットだけでなく、巧みな比喩や表現という細部にも魅力が詰まっている。時に大仰さや皮肉、ユーモアも交えつつ、アメリカの百年前以上前の都会の賑わいや喧騒、西部の町の乾いた空気や

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 「言葉に飢える、という表現がある。たしかに言葉は心を潤す。危機にあるとき人は、些細な一言によって、消えそうだったいのちの炎をよみがえらせることさえある。」 一般的なブックガイド、読書案内かと思って手に取ったが、言葉を巡る切なる想いが随所に

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 この連休は鶴岡の藤沢周平記念館で行われている「『蝉しぐれ』の魅力」展へ。藤沢周平記念館では、生前に藤沢周平がインタビューに応えていたテレビ番組を観ることができた。その中で、庄内の人びとの特徴としてつつましさを挙げ、自身も歴史上の英雄ではな

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 言語や宗教、文化といった共通性の下、多様性も内包する「ヨーロッパ」の歴史を概観する。2分冊となっていて、本書は古代ギリシャから絶対王政期の17世紀末までを扱っている。 世界史の教科書のように、基本的なポイントは押さえつつ、独自の視点が随所に

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 同じく「街」に焦点を当てつつも、著者の代表作『都市空間のなかの文学』が理論を重視する一方、本書は実際に小説の舞台を訪れ実践に重きを置く。文学作品の中にのみ生きる「幻影の街」を歩き、作品の中に描かれた都市を復原しようと試みる。樋口一葉の『た

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 藤沢周平の多くの小説の舞台となる海坂藩。そこで描かれるのは穏やかな世界ばかりではなく、血なまぐさい政治や剣も描かれるが、藤沢の透明感のある文章にかかると、端正さ、清雅さが基調となる。 本書は、時代小説や市井小説、歴史小説、伝記小説など藤沢

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 「邪馬台国はどこにあったのか」、「鎌倉幕府はどのように成立したか」、「明治維新は江戸の否定か、江戸の達成か」、「戦争は日本に何をもたらしたか」、「戦後日本はなぜ高度成長できたのか」 古代から、中世、近世、近代、現代まで、日本史における約30

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 神戸と横浜という港町は一見似通っているようでいて、異なる点を持つ。どちらも開港後に急速に発展したものの、明治維新とほぼ同時に開港した神戸と、旧幕時代を経験した横浜とでは「迷い」や「苦味」といった点で街の性格が違うと著書は言う。様々なエピソ

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 明治初期の時代や文化の背景、日記、作品の変遷などから、その余りにも短い生を燃焼した樋口一葉の全体像を捉えている。  日記からは、名家の令嬢たちが集う萩の舎塾での、零落した士族の娘である一葉の羨望や憧憬、冷笑などがない混ぜになった複雑な心理

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 長い旅路も次第に終わりへと近づいていく。人生と同じく、旅も幼年期、少年期、青年期、壮年期を経て、老年期へと向かう。軌を一にして、旅の舞台は、熱気と混沌の渦巻くアジアから、安定と衰微をはらんだヨーロッパへと移っていく。季節もまた、旅が始まっ

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 プロジェクトXのシリーズを読んでいると、体の内側から沸々と勇気が湧き上がってくる気持ちになる。次から次へと新たに生じる苦難にもめげす、一心に自身に与えられた役割に邁進する姿は、「天職」という言葉を想い起させる。  本書では、戦後のアジア復

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 内海隆一郎の「人びとシリーズ」に出逢ったのは中学校の国語の教科書。本書にも載っている「残されたフィルム」の話は、古道具屋に持ち込まれたカメラの中に残っていた、桜を背景に母親が赤ん坊を抱いているモノクロの写真を持ち主に返そうと、写真から手が

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 米原万里さんの『旅行者の朝食』を読んでいたら、本書を海外の駐在員にあげたところ、後でとても怒られたというエピソードがあったが、実際に本書を読んで納得できた。 自家製のタクワン漬けの奮闘記をはじめ、吹いては食べ食べては吹く熱々の鍋焼きうどん

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 芥川龍之介が三十歳頃の小説が編まれている。身辺の出来事を題材にした作品から、「六の宮の姫君」といった王朝物·歴史物、キリシタン物など作品の幅は広い。そして、どの作品も削ぎ落とされた緻密な文章の中に、人間のエゴイズムや人生の業のようなも

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 平成という一つの時代を、経済、政治、社会、文化という視点から概観する。専門分化が進む現代にあって、社会学者である著者は「ショック」と「失敗」という視点から、平成時代の全体像を捉えようと試みる。 バブル経済の崩壊、阪神·淡路大震災とオウ

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 虚構という形式を借りて現実以上の真実を見せる、小説というもの。特に著者は、普段見慣れたものを「見慣れないもの」として表現することで、認識に揺さぶりをかけ、ものの本質に触れさせようとする技法、「異化」に注目する。一人称形式により、語り手の特

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 食をテーマにしたこのエッセイ集は、幼い頃にプラハで過ごし、その後ロシア語通訳として活躍した著者らしく、あまり馴染みのないロシアや東欧の食べ物が多く現れるが、どれも面白い蘊蓄に溢れ、ついクスッと笑みがこぼれてしまう。そして、「生きるために食

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 「働くということは生きるということであり、生きるとは、結局、人間とはなにかを考え続けることに他ならない。」 大学を卒業後、自動車メーカーで勤務しつつ小説を書き、三十代後半で会社を辞め作家として独り立ちするまで十五年の間会社員生活を送ってき

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 トルストイのアンナ・カレーニナは、「幸福な家庭はどれも似たものだが、不幸な家庭はいずれもそれぞれに不幸なものである。」という一文から始まるが、樋口一葉のこの短編集も様々な形の不幸が変奏されている。 ままならない人生、一時はそれに抗おうと反

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 中公新書の『不平等社会日本』が注目を浴びた著者の論考集。格差問題を中心に幅広く日本社会の抱える課題を取り上げており、社会学者ならではの論理的で明晰な分析は鋭さを帯びている。 本書が書かれた2000年代は小泉構造改革の中、格差問題や自己責任論が

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 「雪が見たいな、とはげしく思うときがある。暗い空の果てから雪片が音もなく、休むこともなく、霏々翩々と舞い下りてくる。その限りなく降る雪が、峻烈に心を刺してくれるだろう、という雪へのあこがれである。」 朝日新聞のコラム「天声人語」を1970年代

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 デパートの和菓子店みつ屋を舞台にした『和菓子のアン』の続編。本書でも個性的なお店の面々や和菓子を鍵とした謎解きの魅力は変わらない。ただ、変わらぬ面白さの中に、タイトルにあるように、青春ならではの悩みや葛藤が織り交ぜられている。自分の進むべ

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 戦災で焼け落ちた名古屋城の再建、船が錯綜する東京湾の安全のための海上交通システムの創出などいずれのプロジェクトも印象深いが、圧巻はやはり黒四ダムの建設の話だった。延べ一千万人が携わった未曾有の規模だけでなく、その過酷さも凄まじかった。「黒

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 本書は中学生の頃に読んだけれど、この本の良さ、本質は分かっていなかったように思う。時を重ね、人生の様々な荒波を生き、大なり小なりの敗北を重ねて初めて、この老人の苦闘の意味や価値を見出すことができるし、「人間ってやつ、負けるようにはできちゃ

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