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2020年01月18日13:33

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生き延びた君たちこそがヒーローズ ( 映画『ジョジョ・ラビット』)

同じ公開日であるイーストウッドの新作でなく、こっちを選んでほんとうに良かった!
気の早い話ですみませんが、今年の洋画ベストスリーに入れたいくらいの快作。

第二次大戦末期のドイツ。主人公の「ジョジョ」は10歳。彼が生まれた時には国は既にナチス政権下にあった。
彼もその教育を受けた、言わば生粋のナチスボーイ。
ヒトラーユーゲント(ナチス青年団)のキャンプに参加し、立派な兵士になるために奮闘する毎日を送っていた。
しかし訓練でウサギを殺すことができなかったジョジョは、教官の「キャプテン・K」から「ジョジョ・ラビット」という不名誉なあだ名をつけられ、仲間たちからもからかいの対象となってしまう。そしてある日の教練で事故を起こし、顔に大きな傷を負ってしまう。

ジョジョは母親(スカーレット・ヨハンソン)とふたり暮らし。父親は出征したまま行方不明になっているが何か疑惑ありげ。姉もいたが昔に病死しているらしい。
お母さんは、ジョジョに限りない愛情を注ぐ、奔放で怖れを知らない自由主義者。しかもどうやら、彼女はジョジョの知らない秘密があるようだ。それに気がつきショックを受けるジョジョ・・・

これ以上はネタバレになるので説明できません。とにかく、その先の見えない展開だけでなく、戦時下、そしてナチスの時代という重い題材をまるで童話のようにコミカルに、だけどそこにはラブ&ピースのメッセージと戦争の悲惨さを絶妙に散りばめて行くのは見事というほかありません。
どれだけ絶妙かは、おそらくご覧になればわかります。としか言えないのはどうか御容赦(笑)、昔から反戦喜劇の傑作は数あれど、本作も間違いなくその1本に入ると言っていい。

おそらく、誰がご覧になってもいちばん印象的(強烈)なのが、事あるごとににジョジョの目の前に現れる「アドルフ」
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もちろんそれはヒトラーの幻であり、ジョジョにとっては教えを乞うヒーローの妄想だ。これは昔から色々な映画で用いられた手法だけど(僕は11年前のケン・ローチ監督『エリックを探して』が印象的。その時はマンUのサッカー選手、エリック・カントナ)、まさかヒトラーを持ってくるか!と。
もちろん彼がジョジョをナチス主義で鼓舞するのだけど、これがまたなんともユーモラスなのですね。しかしジョジョはいずれは「アドルフ」の呪縛から抜け出さねばならない。その時は来るのか?そこも見所。
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フォト【予告編】https://youtu.be/L4rFW69Ypk0

この映画がどれだけユニークで秀逸なセンスなのかをいちばん物語るのはオープニングだ。ヒトラーに熱狂する女性たちの記録映像のバックで流れるのは、なんとビートルズ「抱きしめたい」ドイツ語バージョン!
独裁者もロックスターみたいなものじゃないか?という、誤解を招きかねない強烈なアイロニー。ポール・マッカートニーがよくぞ許諾してくれたものだと思う。
そして、それと対を成すようにエンディングな流れるのは・・・!? これがもうほんまに感涙モノなんです。
この素晴らしい計らいだけで星ひとつ進呈したいほどで、ラストシーンだけでもリピート観映したくなった。

ビートルズ「Komm Gib Mir Deine Hand」
https://youtu.be/B-mU-MwAjv4


終盤にジョジョの街も戦火に巻き込まれるところから戦争映画らしい様相になるのだけど、このディテールもまたリアルで、「その筋」大好きな自分も注目させられたことも付け加えておきたい。
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教官の「キャプテン・K」(演じるはイーストウッドの新作にも出演しているサム・ロックウェル)も大きな役どころなのだけど、市街戦の場面で彼が構えるマシンガンがなんとベルグマンMP18! 
装備が逼迫して、こんな年代物の兵器が持ち出されたのを物語るようで心憎い限り。

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