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2020年01月17日21:47

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唄はいつまでも・・・浅川マキの遺産

いつぞやつぶやきましたが、去年の大晦日の晩にとつぜん、浅川マキの歌がむしょうに聴きたくなって、CD棚に5セットある彼女の2枚組ベストをぜんぶ引っ張り出したのです。

よりによって、どうして大晦日(笑)
安堵感と虚無感が無い混ぜになった「たまらない」心持ちが彼女の歌を欲したのか。

1年以上振りに聴いた。
心の奥に、ずぶっと刺さり、さざめくように共鳴し、時に包み込み癒される彼女の歌声。やっぱり素晴らしい。

彼女のイメージがいちばん強いアングラ歌謡、もしくはフォーク。
もうひとつの持ち味として知られるジャズ。あるいはロック、AOR風、実験的な音楽。
情念が青い炎を立てるような歌があれば、優しげな歌、溌剌とした歌。
どれを歌わせても彼女の唄。
身体の奥から重く迸るその声は、まさに彼女にとってのソウルでありブルース。

真心ブラザースの歌じゃないけど(笑)、僕が彼女を知ったのは既にこの世に居なくなった後だ。
3年前、日本橋のレコ屋でたまたま売られていた彼女の追悼オフィシャルアルバム『Long Good-bye』に目に留めて、おそるおそる(?)買って聴いた時のインパクトは忘れられない。

「こんな風に時が過ぎて行くのなら」(1973年)
https://youtu.be/irSE8XsPrYg

同じ店に彼女が晩年、2枚組4部を10年間かけて編んだセレクション『Darkness』の「Ⅲ」があったので後日にこれも買った。更に打たれて、Amazonで残りの3部を続けざまに買った。
あらためて聴いてびっくりしたのは、その音質の素晴らしさ。
間近で響きわたるような彼女の歌声の臨場感。どんなリマスタリングを施したのかと感嘆させられる。

　「Possession Obsession」(1986年)
https://youtu.be/v6LQNnAng18 (ホール&オーツのカバー！)

「炎の向こうに」(1983年)
https://youtu.be/qjxInZXz2TI

ピアノは渋谷毅さん。

もっと彼女のことが知りたくて先日、図書館で彼女の追悼本である『ロング・グッドバイ』を貸し出した。
生前に彼女が書いたエッセイや回想文、対談、関係者の証言などが貴重な写真を交えて明らかになる浅川マキの世界。
あらゆる面で彼女がどれだけ完璧主義者かというのがあらためて解った。だからこそあの『Darkness』の素晴らしい音質だったわけだ。(逆に、それ以前にCD化されたのは納得いかないので全て廃盤にしてしまったのは別にネットで知った次第)

僕が違う方向から浅川マキの存在を意識したのは、昔に読んだ加藤登紀子さんの回想録。
同時代に歌手デビューしたふたり。実は登紀子さんはそれにあたって彼女をずいぶん意識し、ひそかに憧れていた、と語られてて、それがなぜか印象に残っていた。もちろん当時は「アングラの女王」のイメージしか無かったのだけど、後に聴いてみればそれも納得。
甘くセンチメンタルな「ひとり寝の子守唄」にしても、野坂昭如が作詞した「黒の舟唄」も、浅川マキに歌わせても違和感が無いように思えるし、同じような曲が他に幾つもある。
『ロング・グッドバイ』を読んであらためて驚いたのは、実はお2人、若い頃から親交があったとのこと。
光と影のように対照的に見えて、実はとても通じるものがあった。僕は登紀子さんは昔からファンだったから何か嬉しく思えた。

「浅川マキの歌を東京・新宿の「蠍座」で聴いたのは、1968年のことだった。（中略）ライブの後、私は雨の中を泣きながら歩いた。それは嵐のような時代の中を生き抜こうとしている者たちの心の底をうずかせる、重くきっぱりとした反世界の歌だった。」(『ロング・グッドバイ』より、加藤登紀子による追悼エッセイ)