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2019年12月09日20:03

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ふたりの母の思い ( 映画『夕陽のあと』)

師走に入っても邦画の良作が続きます。

ストーリーを有り体に言えば、産みの母と育ての母との対立。
これって、昔から講談やメロドラマに使われているように古典的、というよりアナクロと言ってもいいのに、敢えて映画にしたのはなかなか勇気の要ることだ。
反面、デリケートな題材でもあるだけに一歩誤ると、それこそ『閉鎖病棟』みたいに安っぽい作劇になりかねないのを(もう槍玉にあげるのはやめろ。笑) とても味わい深い映画に仕上げている。
加えてオリジナル脚本というのに評価を上げたい。僕は観ていて、てっきり角田光代さんの原作じゃないかと思ったくらいだから。

鹿児島県の北端の島である「長島」
茜(貫地谷しほり)は1年前からここに移り住み、漁港の食堂で働いている。
一方、ブリの養殖業を夫とともに営む五月(山田真歩)は、赤ん坊の頃から育ててきた7歳の里子・豊和との特別養子縁組申請を控え、本当の母親になる喜びに胸を膨らませていた。
そんな中、児童相談所の職員により、豊和はかつて東京のネットカフェで起きた乳児置き去り事件の被害者だったことが明かされる。そしてその事件の被告人である産みの母親はなんと茜だった。茜は7年の歳月を経て、再び息子を取り戻すべく島にやって来たのだ。激しく動揺する五月。
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最初の1時間で、こうした事情が徐々に明らかになる展開が静かにドラマチック。いったい着地点がどうなるのか?という期待と不安が観る者の気持ちをぎゅっと包み込んでいくのがいい。
その「答え」は?そのきっかけは・・・?

これが上手い!まさに天使がくださったヒント。
この映画が秀でているのはまさにそこ。ネタバレになるので言えませんが、「母は海」「産みの母」というまるでダブルミーニングのようなキーワードというのに唸らされました・・・って、これってけっこうネタバレか?(汗)

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主演の貫地谷しほり。僕はうかつにもチャーミングで快活なイメージしか無かったのだけど、こんなにも陰の深い難役を演じ切ったのは見事。
対立する山田真歩も合わせて、2人の心の揺れ動きが、小波のようにうねる抑制の効いた演出。夕陽が象徴的な映像。いずれも素晴らしい。
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これが惜しくも遺作となった木内みどりの存在感も良かった。
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【予告編】https://youtu.be/IsXb-KMT9hY

監督の越川道夫さん。フィルモグラフィーを見ると、監督ではなくプロデューサーとして『ドライブイン蒲生』『かぞくのくに』『楽隊のうさぎ』『夏の終わり』『私は猫ストーカー』など地味ながらも良作ばかりを手掛けてきた人だった。

観終わって、鰤が食べたくなることうけあい(笑)
鰤は出世魚だから、そういう「我が子への願い」も込められているのは考え過ぎ?

〈 シネリーブル梅田で公開中 〉

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