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2019年11月15日18:42

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それでも家族 ( 映画『ひとよ』)


なにしろあの白石和彌監督が手がけるファミリードラマなのだから期待せずにはいられない。観てみればまさに力作。

彼の映画は良くも悪くも(?)エネルギッシュな作品ばかりなのだけど。本作ではちょっとだけアクションはあれど、そのベクトルは家族達の感情のこもり具合へと向けられている。

15年前のある夜。タクシー会社を営む稲村家の母こはる(田中裕子)が、夫を殺害する。彼のDVに苛まされていた3人の子どもたちの幸せのためと信じての犯行だった。
刑期を終えて転々としていた彼女がとつぜん帰って来る。
戸惑いながらも暖かく迎えようとする子供達だが、彼らはそれぞれに蟠りを抱えている・・・
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20年近く前に公開された中国映画『ただいま』を思い出した。
些細な感情のもつれで姉を殺した少女が刑期を終えて帰宅するストーリーで、帰るに帰れない彼女を支えるのが途中で出会った婦警さん。彼女の存在感が良かった。

ところが本作は「帰ってきてからの話」。
それがストーリーになるの?と思いきや、実は子どもたちは、お母さんが自分たちを救ってくれたのは理解しながら、受け入れてきれてない。なぜなら彼らは「夫を殺した妻の子」として辛い日々を送らざるを得なかったから。しかも3人が3人、その胸中を異にしている。
いちばん素直に喜んだのが娘の園子(松岡茉優) やっぱりそこは女同士だな、と心和む場面もあったりする。
逆にいちばん拗れているのが雄二(佐藤健)、そして、自分の家庭内でも問題を抱えている長男の大樹(鈴木亮平)がいちばん悩みが深そうだ。
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家庭内DVを暴力で対抗/排除(要するに、ぶっ殺す)する是非についてずいぶん考えさせられてしまう。実際にそういう境遇に育ってもちゃんとした大人になった方も居たりするのだから。しかし映画はそれについてはジャッジしない。描かんとするのはあくまでも家族の感情。
兄弟3人、共に苦労はしても既に違う道を歩んでいる。その距離感、思いのズレ。みんな考えてることはバラバラで、胸の内をなかなか打ち明けられない。
しかしそれでも家族は家族。簡単には割り切れなくて、答えは簡単には見つからないままでも、少しずつでも歩みよれるだろう。未来はきっとある。
それをヒリヒリとしたテンションで描き切ったのが白石監督流の骨太ヒューマニティだと感嘆させられたのでした。

フォト【予告編】https://youtu.be/LlcTENlTM5Y

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こはるが帰ってくるのを待つかのようにタクシー会社を守り続ける所長や従業員達のキャラが良かった。そのひとりが『よこがお 』で力演した筒井真理子なのにも注目だし、その優しいユーモアが物語を温かく照らしている。

ちなみにこの映画、オリジナル脚本ではなく舞台劇が原作。そちらがどんなものなのかも気になったりする。

2016年『日本で一番悪い奴ら』
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1953769560&owner_id=26940262


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