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mixiユーザー(id:26940262)

2019年01月31日21:20

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環境保護の先にあるもの (M・R・オコナー『絶滅できない動物たち』を読む)

ダム開発の為に生活環境を破壊され、保育器のような飼育ケースで「露命」を繋ぐキハンシヒキガエル。

都市化で、同じように生活環境が狭まったのに比例して頭数が激減したフロリダパンサー。
繁殖に必要な遺伝子多様性を得るために別種のパンサーと交配させようと図られる。

アフリカの政情不安が密猟を増大させ、今や風前の灯のキタシロサイ。

フォト (キハンシヒキガエル)
(フロリダパンサー) フォト
タイトルを一瞥すれば、ああこの本は絶滅危惧種を紹介して環境保護を訴えるような内容かと思いきや、そんな「ナショナルジオグラフィック」なもんじゃないのです。

フォト
(キタシロサイ)

もちろん著者オコナーさんは、最初に挙げた三例のように「種の保全/保護」に懸命に取り組む現場を詳しくレポートはしている。
ところが、科学の進歩はもはやその先を目指しているのである。それはすなわち「種の復活」である。
先月紹介した『訳あって絶滅しました』にも登場する「リョコウバト」の遺伝子をゲノム解読して復活せようと目論む研究者がいる。甚しきはネアンデルタール人を蘇らせようとする動きもある。こうなるともはや映画『ジュラシックパーク』の世界だ。
「脱絶滅」という言葉ですら生まれている。つまり種の保全は科学力によって解決できると。
それは人間の思い上がりではないのか?

フォト (リョコウバト)

ここで数歩引いて考えてみましょう。我々人類は実質的に地球を支配している(と思いこんでいる?「人新世」という年代用語も使われつつある)。開発と資源の収奪で大きな「環境負荷」を地球に与えている。
多くの絶滅危惧種はその現れだ。だからこそ我々は環境を保全する義務があるのだけど、果たして科学の力を利用して干渉するのがどれだけ「自然」なのだろう?

フォト (タイセイヨウセミクジラ)

ネアンデルタール人復活について、著者は彼らが絶滅した理由をリサーチしていくうちに「自然(野生)と人間」の関係性について思索する。
もはや現代において「手付かずの自然」は存在しないのではないか?
さらに多くの海洋生物学者を悩ませる「タイセイヨウセミクジラ」の謎に満ちた生態は、地球の意思そのものではないか?
それは即ち本書ではじめて知った、ティモシー・モートンが提唱する「ハイパーオブジェクト」論へ到達するのではないか?

ここまでくるともう哲学の域に達していると言っていい。特に終章は刮目され通し(抜粋しようと思ったけど、とても転載し切れなかった)
そう、本書は科学と環境学について深く大きな一石を投じる一冊なのです。

日本版タイトルをあらためて考えてみれば、その真意が見えてくるような気がした。
原題は『Resurrection Science(復活の科学)』

哲学、科学両面において難解な記述にてごずるけど、それでもレビュー評価は★★★★
フォト






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コメント

  • mixiユーザー

    mixiユーザー2019年02月01日 07:51
    これは読まねば!
  • mixiユーザー

    mixiユーザー2019年02月01日 07:54
    > mixiユーザー

    ぜひ読んでください!(笑

  • mixiユーザー

    mixiユーザー2019年02月01日 09:55
    まるでホラーですね。
    環境を壊さずには生きられない、そして交通網の発達でウイルスや細菌を知らずしてバラ撒けて、壊れたらコントロールできない原発をあちこちに作り、微細プラスチックを世界中の海に、核爆弾をため込んで、細菌兵器を温存し…おお、ニンゲンこそ生物絶滅推進種、絶滅危惧種かも?
  • mixiユーザー

    mixiユーザー2019年02月01日 10:09
    > mixiユーザー

    ホラーというか、マッド・サイエンスと言っていいのか・・・
    特にリョコウバトを復活させようとする研究者なんてどう見てもクレイジーなんですよ。
    学位持って無いアウトサイダーだからか余計に妙な信念持ってるし。

    でもこの本の著者は、反省や教訓を促するように説教くさいものではなくて、もっと大局的に考えましょう、という姿勢がいいと思いました。
  • mixiユーザー

    mixiユーザー2019年02月11日 16:04
    > mixiユーザー 

    初めまして。訳者の大下 英津子と申します。

    丁寧に読み込んでくださって、訳者冥利に尽きます。ほんとうに嬉しいです。不躾とは思いましたが御礼を申し上げたく、コメントいたしました。ありがとうございました。
  • mixiユーザー

    mixiユーザー2019年02月11日 19:35
    > mixiユーザー 

    吃驚しました。
    なんと光栄です。こちらの方こそ誠にありがとうございました。

    実は、白状しますとこの本、図書館で貸し出したものなのですあせあせ(飛び散る汗)
    出版に携われた方にとっては、好ましくない読者でしょう。そこのところはどうかご勘弁ください。
    ただ、これだけは言いたいですが、決して速読とか斜め読みではなく、自分なりに精読したと思います。

    これからもますますのご発展をお祈りしております。翻訳作もチェックしたいと思います。
  • mixiユーザー

    mixiユーザー2019年02月11日 20:32
    > mixiユーザー 

    いえいえ、ここまで精緻に読み込んでいただいて、そして過分なご紹介をいただけて、たいへんありがたく、感謝してもしきれません。図書館の本も、ここまで丁寧に読み込んでもらえたら本望だろうと思います。本好きは、欲しい本、読みたい本を全部買っていたら身代が潰れます(かく言うわたしも 笑)。

    肉屋のトクさんをはじめ、素晴らしい読者を得られて幸せな本です。訳者としてもほんとうに嬉しいです。あらためまして、ありがとうございました!
  • mixiユーザー

    mixiユーザー2019年02月11日 22:17
    > mixiユーザー

    再度のコメント、ありがとうございます。

    図書館利用は、フトコロ具合もあるのですが、貸し出し期限がある方が「読む気」が促進される、という単純な理由もあるのですあせあせ宿題みたいなもので。
    逆に、買った本の方が「積ん読」しがちです。

    この本を知るきっかけは確か新聞の書評だったと思うのですが、Twitterで鴻巣友季子さんも推奨されていたのもきっかけのひとつでした。

    映画や本などについて、偉そうな駄文ばかりあげております。一部のマイミク方からはずいぶん疎まれていますが…(苦笑)
    このレスをマイミク承認の挨拶代わりとさせていただきます。今後とも宜しくお願いします表情(嬉しい)

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