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2018年12月14日14:49

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ソフィア・キプルスカヤ ハープ・リサイタル

ハーピストは、美人と相場が決まっている。でも、勝手ながらむくつけきイメージを持っていたマリインスキー歌劇場管弦楽団にこんな美人のハーピストに居るとは、新聞の広告を見るまでうかつながら知らなかった。

日経新聞本社ビルの日経ホールで定期的に開催されている“日経ミューズサロン”。その音楽会もホールも一度は訪れてみたいと思っていたところ、この広告が目にとまりさっそくチケットを申し込んで出かけてみました。

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日経ホールは、東京都心の大手町にある日本経済新聞社東京本社のビル(日経ビル)の3〜5階にある多目的ホール。ちなみにこの日経ビルは、JAビル、経団連会館ビルに隣接している。もともとは大手町合同庁舎があった場所で、国有地が払い下げられ都市再生機構の施行による区画整理事業により10年ほど前に再開発され、近隣にあった上記の3団体の社屋が移設・新築された。隣接しているというが、外見はひとつの高層ビルとしかみえず、実際のところは内部の通路やエスカレーターもつながっていていささかややこしい。

610席ほどのコンサートホールとしては中規模のホールですが、総会や講演会などの会場となる多機能ホールなのでかなり広く感じます。座席もゆったりとしていて、収納型のテーブルや手元ライトもあるのは、先日の八ヶ岳やまびこホールと同じです。一方で額縁型のステージはあまり広くなくて、その真ん中にポツリとハープが置いてあります。

ホールの側壁は、木の柱が林立して森の木立のよう。ライトアップで木々の梢から漏れる陽光のような意匠になっています。オーディオ好きならどこかで見かけたようなデザインですが、実際、このホールでも壁面の一次反射を抑えるようになっているようです。ステージからの直接音が聞きやすく、そのことは講演会などには向いていますが、音楽ホールとしては残響が乏しく功罪は相半ばするようです。

プログラムは、小品が並びますが内容としてはなかなかの硬派。

最初のバッハの「トッカータとフーガ」は、ピアノ編曲としてもおなじみですが、ハープであってもその超絶技巧ぶりと荘重かつ壮麗な幻想的な曲想はプログラムの口切りとしてふさわしい。

ツァーベルは、ベルリン生まれのハーピストですがロシアに移って王立バレエの専属となりサンクトペテルブルク音楽院で後進の指導にあたった人。ハープの最大の持ち味であるアルペジオが吹き上がる噴水そのものになっています。

チャイコフスキーやムソルグスキーの編曲を手がけたワレリー・キクタは、現代ウクライナを代表する作曲家のひとりだとか。数多くのハープに向けた作品を作曲しています。いずれも原曲のスケールの大きな曲想を華麗なハープの音色に乗せて展開しています。

ドビュッシーの「アラベスク」は、もちろん原曲はピアノ曲ですが、こうして聴いてみるとその細密画のような繊細さと緻密さはまるでパープのために作曲されたもののように思えてきます。

休憩時間は、ドレスの上にちょっと羽織ったご本人がステージにずっと出ずっぱりのようにして調弦に余念がありません。後半が開演する少し前に奥に戻ったかと思ったら、明るいベージュ色のドレスに着替えて登場。その長身の姿はいっそう華やか。ぱっと脚を広げてハープを身体の間において、長いドレスの裾裳をすっと真ん中でたくし上げる様子はいっそう艶めかしくてドキドキしてしまいます。

後半の中心は、サンクトペテルブルクのロシア美術史研究所所蔵の楽譜から発掘された作品群。ロシアの上流社会では音楽サロンが盛んで、貴族たちは誰でも楽器を弾いたり歌ったりしていたそうで、エリザヴェータ女帝所有のノートの中からハープの楽譜がたくさん発見されたそうです。

発掘された楽譜の作曲者ボクサは、現代ハープの「エラール式ハープ」を世に広めた人で、ペダル・ハープの機能をふんだんに発揮させています。バッハにせよ、ベートーヴェンにせよ、作曲者と楽器の進化は切っても切れない関係にあるようです。ボクサは、やはりイケメンだったそうで、さながら小説の主人公かのようにスキャンダルまみれの人生をたどったとか。やはりハープは美貌の主こそふさわしいのです。

最後の「モルダウ」は、ハープの曲としても定番のひとつ。なるほどこうして聴いてみると、川の流れと楽しくにぎやかな舞曲と華やいだ歌は、ほんとうにハープにぴったり。

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やはりイケメンでウィーン・フィルの首席ハーピスト・グザヴィエのアルバムでも筆頭にこの曲を取り上げています。

ここからは、いかにもハープらしいエンタテインメントの大団円。

アンコールの2曲は、まさに陶然とするような華やかな宴の真ん中でハープをかき鳴らす天女のよう。コンサート最後の「引き潮」は、ポピュラーなムード音楽のスタンダードですが、長身小顔の身体を大きくゆったり前後に揺らしながら弾くお姿は、波瀾万丈、いくつものロマンスの花を咲かせた美しい淑女といわんばかりの素晴らしい演奏でした。


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第478回 日経ミューズサロン
ソフィア・キプルスカヤ ハープ・リサイタル

2018年11月27日(火) 18:30
東京・大手町 日経ホール
(P列10番)

J.S.バッハ/トッカータとフーガ ニ短調BWV565
ツアーベル/噴水 作品23
チャイコフスキー(編曲:キクタ)/歌劇「スペードの女王」の主題による幻想曲
ムソルグスキー(編曲:キクタ)/モスクワ川の夜明け
ドビュッシー/アラベスク第1番、第2番

グリンカ/ノクターン
ベッリーニ/歌劇「ノルマ」の主題による幻想曲

<エリザヴェータ女帝図書館の秘蔵曲>
作者不詳/2つの小品
ボクサ/5つの前奏曲
クルンプホルツ/ハイドン交響曲第53番より「アンダンテ」の変奏曲
ロッシーニ(ボクサ編曲)/歌劇「タンクレーディ」よりアリア

スメタナ(編曲:トゥルネチェック)/モルダウ

(アンコール)
プロコフィエフ/「プレリュード」
マックスウェル/引き潮

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