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2015年11月30日22:39

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「欠陥マンション、わが闘争日記」(松居一代 著)読了

横浜のマンション傾斜問題に触発されて読んでみた。

バブル期に建設された欠陥マンションが話題になったが、女優にしてマルチタレントの著者がスーパーゼネコンと大手デベロッパーを相手に一歩も引かずに闘い補償を勝ち取った闘争日記。副題には「ゼネコンに勝った!壮絶600日の全記録」とある。

面白い。

けれども痛快というわけではない。

億ションのクロゼットの天井が汚水とともに崩れ落ちるという大災厄の当日、芸能記者やスポーツ紙の取材を募り新聞などに書き立てさせて、動きの鈍い管理人やゼネコンの苦情担当の面をあかすという荒っぽさだ。なにしろ社会的露出度が高い芸能人という立場を逆用しての脅し賺しの限りを尽くし、カネというものに遠慮容赦もなく、その自己中心的なテンションの高さとその持続力はなかなか常人の及ぶところではない。

参考になることも多い。

1.大企業というものは一個人の苦情など歯牙にもかけない。
  なかなか責任を認めようとしないばかりか、問題を矮小化し原因追及を徹底的に嫌う。
  スーツで着込んだ小ぎれいなエリートは右往左往するだけで何もしない。このあたり
  は実にリアルで可笑しい。

2.頼むべきはプロ
  その代表は弁護士。それも最強の弁護士を雇うべし。「強弱」というのは理屈ではな
  い。弁護士には「格」「値札」のようなものがあって敵(大企業側)が雇う弁護士と
  は最低でも同格以上でなければならぬ。

3.弁護士は怠惰
  弁護士もカネと効率…とプライド。怠惰で仕事の遅い東大出の弁護士を「のろま」と
  こき下ろしたあげく「やる気がないなら解任!」と宣告したら、ムキになって働き
  だしたという。弁護士という人種は別に聖人でもなんでもない。相手の弁護士ばかり
  か、依頼人のことも常に値踏み(職業、学歴、財力etc.)している。

4.何ごとも証拠と記録
  カメラでの現場写真、交渉時の隠し録りなど臆面もなく総動員。汚水で毀損した膨大
  な品数の衣服、バック、宝飾品の保険金も、レシート、出納帳、果ては医師診断書ま
  で、あらゆるものを総動員して保険会社から破格の保険金をせしめている。
  『世間の常識』『大体の額の何%…』ではそうはいかない。
  女は強い。

5.頼れるものは自分だけ
  弁護士も保険会社も、修復工事の現場も、信頼して任せてしまえば負けだ。自分が
  やらなければ誰もやってくれない。交渉のスケジュールもそうだし、交渉の席には
  可能な限り立ち会い、保険求償明細もすべて自分で作成したそうだ。自分で撮影した
  原状写真を突きつけて工事のやり直しもさせているのには思わずドン引き。

6.何よりも団結
  デベロッパーの肩を持ちたがる管理組合の理事長を解任。副理事長をかって出て意に
  沿う運営をしている。問題の部屋を公開、マンション住民の各部屋の確認を促したと
  ころ8割近くの部屋で欠陥が発見されたという。

二年にも及ぶ闘争を戦い抜き、勝利を収めたが、その「精神的ストレスは恐ろしい」という。そりゃぁそうだろう。

最後には「仲裁」を求めたが、その仲裁弁護士が、シロウトの松居から見ても識見・威厳ともにただならぬ気配をかもしていたという。味方ばかりかゼネコン側の凄腕弁護士もひと目見るなり顔色を失ったその弁護士とは元最高裁判事だったという。

…やっぱり。

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