歌舞伎や落語、講談の中には、病気のことが直接テーマで描いたのはそんなにたくさんは無い。
あっても祈祷やお参りで、という話の中に出てくるだけで。
つまり、寿命そのものが短い現実世界で、病気の治療薬もほとんど無い時代での暮らしが厳しいのに、芝居の中で現実を出しても受けない、って事じゃなかったか、と想像する。
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中国,明の時代に書かれた『五雑俎』という、
今でいう雑学や当時に作者が集めた話を百科事典風に記述した古書がある。
10巻もあるので、全部読んでないが、
この本の中に、中国で病気を治す方法も載っていて、こうやったら治った、
こうした人が居た、という話があるのだが、
「これだけは、、どんな薬を飲んでも、どうにもならぬ。」
と書いてあるのが、天然痘。
それだけ、恐れられていたことがよくわかる。
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歌舞伎の世界、
明治初期に書かれた
籠釣瓶花街酔醒(かごつるべ さとのえいざめ)、通称「籠釣瓶」は、
江戸時代の享保年間に起きた「吉原百人斬り」事件をもとにした話で、
出てくる主人公の男は、顔に、あばたがある、これは天然痘にかかった跡で、
今でもその芝居をする時には、顔にその跡を描く。
で、その男が惚れた吉原の遊女に振られて、
「花魁、そりゃあ、ちっと、そでなかろうぜ」という名セリフの後、
カッとなって切り殺すシーンがあって。
吉右衛門さんの十八番。
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歌舞伎十八番「助六」の、
名乗りの啖呵の冒頭
「いかさまナァ、この五丁町へ脚(すね)をふんごむ野郎めらは、己が名をきいて置け。まず第一をこりが落ちる」
の、こり、というのは、マラリアのこと、だとかで、
成田山不動尊を信仰している成田屋である市川團十郎が「助六」だったので、
助六に睨まれたら病気も退散とかで、芝居小屋がいっぱいになったとか。
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落語で、『疝気の虫」(せんきのむし)がある。
ある医者が、体内にいる病気の元の、虫を見つけて話が出来た。
で、その虫から苦手な物を聞き出したりしたが、
隠れ家もあるという、その場所がキン玉で、。
それを治療に使おうとすると、
男の体から逃げて女の体に移る。
で、そこで治療しようと、苦手な物(唐辛子)を与えると
別荘に逃げようとするが、女にはキン玉が無いので、
「あれ、別荘は?」
というオチで、、。
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上方落語では「池田の猪買い」
で、
体の冷えを直すのに、イノシシの肉を食べればよいと聞いた男が
池田まで行って、新鮮な肉をくれという描写が面白い話があって。
ここでの体の冷えは、性病ではないか?という話がある。
はなしは変わるが、若い頃聴いた事で、
板前の世界では、
醤油などの調味料を、古くなったり、調合を間違えて余ったものを捨てると、
「下(しも)の病気になる」
(性病)という話がある。
、、なんでだろうなぁ、、。
私が子供のころ、母の実家(農家)では、
ジフテリアだったか、麻疹だったか、が家族に出て、
その家族を納屋で隔離した後、
その納屋を大きなビニールシート(当時あったかどうかはわからんが)
でぜんぶ包んで、いまだとバルサンのように、
薬を空気に混ぜて放出する機械で滅菌しているのを思い出す。
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