下村寅太郎さんが『高坂正顕著作集』の月報に書かれていたのであるが、高坂正顕さんは朝に勉強をされた。それに対して西谷啓治先生は夜に勉強をされたという。
朝に勉強をされた高坂正顕さんの書く文体は明瞭簡潔で、夜に勉強をされた西谷啓治先生の書く文体は難解である。西谷啓治先生の文体は読んでいてわかった気になるが、すぐにわからなくなる。それは最初からわかっていなかったということなのである。
朝型の高坂正顕さんと夜型の西谷啓治先生。このお二人が同じ下宿屋に下宿していたことがあったらしい。そこに夜泥棒が忍び込んだとき、西谷啓治先生が起きていて見つかった。それならばと思って泥棒が明け方にその下宿屋に忍び込んだ。すると今度は高坂正顕さんが起きており、また見つかったという。
そんな笑い話を下村寅太郎さんが『高坂正顕著作集』の月報に書いておられた。朝型の高坂正顕さんの文体は明瞭簡潔で、夜型の西谷啓治先生の文体は難解である。なんとなくわかる気がしてその月報を読んだことがあるのである。
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