負け知らずだった日本陸軍が完膚無きまでに敗れた。それが１９３９年、ソ連軍と相まみえたノモンハン事件である。悲劇は、作家半藤一利（かずとし）さんの手により『ノモンハンの夏』の中に凝縮されている。初めて読んだとき、心臓が震える気がした▼日本軍の火炎瓶などの手段ではどうにもならない最新鋭の戦車。圧倒的な戦力の差。敵を研究せず、勇ましいことばかり言っていた高級軍人たちを半藤さんは追及する。「ただただ敵を甘くみて、攻撃一辺倒の計画を推進し戦火を拡大したのは、いったいだれなのか」▼無計画。自己過信。優柔不断。それらは反省されることなく太平洋戦争に引き継がれた。戦前戦中の歴史を徹底的に調べて、わかりやすく書く。半藤さんが９０歳の生涯を閉じた▼文芸春秋の駆け出しの編集者だったとき、坂口安吾から「歴史書にはうそも書かれている」と言われた。だから史料をつきあわせて推理し、合理性を探さねばならないのだと▼編集者から作家になり、「歴史探偵」を名乗った。『日本のいちばん長い日』では玉音放送までの２４時間を、『Ｂ面昭和史』では重苦しいばかりでない庶民の日常を描いた。半藤さんの仕事がなければ、私たちの歴史感覚はずっと鈍くなっていたかもしれない▼歴史を現代に常に結びつけて考える人でもあった。日本で権力が一点に集中していくのを憂い、対談で語っていた。「民主主義のすぐ隣にファシズムはある、そのことを国民はしっかり意識しなければならない
**********************************************************
上記は、今朝の朝日新聞の（天声人語）「半藤一利さんを悼む」の全文である。
昨日の朝日新聞の一面に半藤一利さんの訃報が掲載されていた。９０歳だったという。
半藤一利さんは、いつも次の言葉を繰り返されていた。
「戦争を経験したことのない者たちが戦争を議論している。彼らは戦争を軽く見過ぎている」
と。
わたしも戦争を知らない。小学生の頃、日本が戦争をしていた国であるということを知って愕然としたことを覚えている。当時のわたしは�狎鐐茲楼�いこと�瓩世塙佑┐討い拭�
「半藤：戦後という意識から変えなければならないと、最近になって思うのです。この７２年間、戦後何十年と数えあげてきましたが、韓国やベトナムでは建国何十年と呼びます。私たちは大日本帝国からの延長に戦後日本国があると受け止めていて。日本国という新しい国を建国したのだという意識がない。だから戦前の日本を徹底的に検証しなくてはと言っても、うやむらやな連続性のなかにいるため、問題意識が伝わらない。 」（『サンデー毎日 2017年７月30日号』された「熱闘座談会 半藤一利×保坂正康×青木理」より）
わたしは、半藤一利さんといえば、半藤さんの�犒�国という意識�瓩�忘れられない。
わたしは、�犁�都学派の戦争責任とは何か�瓩箸いμ簑螳媼韻�ら日本の近代史を自分なりに書籍を集めては読み漁っていた。その結果、いわゆる１８７２年の�猯圧綵菠��瓩寮�功体験がその後の日本の、台湾、朝鮮、そして満州という東アジアにおける侵略外交につながっていったと考えるに至った。つまり日本はアジア・太平洋十五年戦争の加害者であるという歴史は決して忘れてはならないことなのである。
戦前の�狢臚�本帝国�瓩叛鏝紊劉狷�本国�瓩箸倭瓦�別の国でならなければならない。しかし多くの政治家や文化人は同一国として考えている。そうして�狷�本国憲法�瓩�GHQに押し付けられた憲法だとして憲法改正を叫んでいる。しかし現行憲法は日本人の手によって制定された憲法であるということを忘れはならない。日本国憲法が押しつけだというならば、「日米安全保障条約」はどうだったのか。あの条約こそが押しつけではないのだろうか。
しかしまたひとり戦争を知っている人がなくなった。戦争を知らない者たちが戦争を議論している。そんな危険なことはないのだ。半藤一利さんの死はわたしたちにそんなことを問いかけているように思える。
ログインしてコメントを確認・投稿する