「マイスター・エックハルトを初めとしてすべての徹底せる神秘達は、まさにかかる〈我性〉からの離脱に究極的自由を求め、それを実現した。偉れた仏教者の場合も同様である。それに対してシェリングの『自由論』の中には〈我性〉の死滅について語られた箇所が一つだけある。彼は次の如くに書いている。すなわち《普通意志と人間のうちの特殊的意思との結合は、既にそれ自体に於て一つの矛盾であり、その矛盾を合一することは不可能ではないまでも困難であるように思われる。生そのものの不安が人間を騙って彼がそのうちへと創り出されたところの中心を去らしめる。何となれば、すべての意思のもっとも純粋な本質であるこの中心は、あらゆる特殊的意志にとっしては、焼き滅ぼす火である。その内〈すなわち中心の内〉に生き得るためには、人間はすべての我性に死なねばならない。それ故、非の中心から周辺へ歩み出て、そこに彼の我性の安らいを求めようとすることは殆ど必然的な企てである。ここからして罪と死との普遍的必然性が出てくる。その際、死とは、浄化されるためにすべての人間的意志が通らねばならぬ火としての、我性の実際の死滅である》と。すなわちここでは〈我性の死滅〉に二つの場合が考えられている。ひとつは普通の意味での〈死〉であり、それは〈中心〉を離れ去って〈周辺〉すなわち諸々の被造物の領域に赴き、そこに彼の我性の満足と安らいを求めた人間たちの辿る道であり、そういう人々は〈死〉に於ける〈我性の死滅〉に依って浄化される他はない。もう一つは生きながら〈すべての我性に死に切る〉ことであり、それに依って人間は〈中心の内に生き得る〉。それは大火聚の中に実際に身心の全体を投入し死了焼了して不死鳥の如くに蘇生する道である、それは困難ではあるが、シェリングはその可能性を否定してはいない。」
上記は、辻村公一著『ドイツ観念論断想�機戞柄亙玄辧法屮轡Д螢鵐亜μ議譟宗惻�由論』における―」からの引用である。
辻村公一先生がここで言われている�犁羔謀�自由�瓩箸蓮�完全なる〈我性からの離脱〉であり、仏教でいうところの�犖腓雖瓩覆里任△蹐Α�したがって、辻村公一先生によれば、我性が自らの本来の在り方を逆転し〈むしろ支配者また全意志にまで高められ〉るところに、〈悪〉が成立する。つまり〈悪〉とは我性の�犢靴雖瓩砲茲襪海箸砲茲辰得犬犬襪里任△襦�
辻村公一先生によれば、人間は〈我性の死滅〉に至る道に二通りあるとシェリングは考えたという。一つは、実際に身心ともに�犹爐稔瓩海箸任△蝓△發Π譴弔蓮◆劼垢戮討硫羸�に死に切る〉ことである。わたしは、この後者の〈すべての我性に死に切る〉ことに、禅宗でいうところの�狢膸爿瓩箸いΔ海箸鬟瀬屬辰道廚錣譴討�た。辻村公一先生もシェリングの�猝議讚瓩箸い�思想に、�狒掬�なもの�瓩鮓�出さられていたのではないかと思ってしまうのである。
この〈悪〉と〈我性〉との関係は、西洋哲学のみならず仏教でも多く論じられてきた考えである。それゆえに〈我性の死滅〉〈我性からの解放〉こそが〈悪の克服〉であり、その〈悪の克服〉こそが宗教で言われる〈救済〉だと論じられてきた。〈悪の根源〉を〈我性〉に見出してきたところはカントもシェリングにもあまり違いはないと思う。ただカントはそのことを�狷仔銑瓩箸いξ琉茲馬世犬燭里紡个靴董▲轡Д螢鵐阿呂修里海箸鬮狷仔舛箸いξ琉茘瓩鯆兇┐董匏措�上学〉あるいは�狃ゞ気箸いξ琉茘瓩砲泙燃搬腓靴届世犬茲Δ箸靴拭�シェリングがドイツ観念論に属しながらも、ドイツ神秘主義的思想に触れなければならなかった所以もこの辺りにあるのであろう。
わたしは、引用した辻村公一先生の文章より、�牋�の克服�瓩箸いμ簑蠅鉢犁澪儉瓩箸いμ簑蠅箸�つながっているのではないかと思えて来たのだ。親鸞の�牋�人正機説�瓩皸�人という自覚を持つ凡夫が阿弥陀如来によって救済されていくかという問題ではあるが、そこで問われるのは、自分の�牋��瓩鮗�分自身ではいかようにも克服することができないというところの問題なのである。自力作善が不可能だから阿弥陀如来による他力救済を願うのである。
わたしは、この辻村公一先生の文章より�牋�の克服�瓩箸いμ簑蠅鉢犁澪儉瓩箸いμ簑蠅�つながりがあるということに気付かされたのである。
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