The Beguiled/ビガイルド 欲望のめざめ

『The Beguiled/ビガイルド 欲望のめざめ』
90分の長さを感じさせないぐらいだから、おもしろかったのだろう。ソフィアコッポラはたぶん、ポップな曲で彩ることもせず、グランジ色も出さず、雰囲気をつくろうとも敢えてせず、ドラマ映画をちゃんとつくることに取り組もうとしている。そうした観を感じる作品である。原作があっての映画化なのでドンシーゲル版と比較されることは全く重要でもないだろうけれど、イーストウッドがマルパソでつくったものはたぶんもっとマッチョで、イーストウッドに合ったクールさを出している感覚でのまなざしであり、その志向対象が女性性というものアンビバレントという以上に多様な面を出し、男性サイドからみる異常なサイコでミステリアスなものがいつものイーストウッドのように表されているのでは、と思うが、ソフィア版は、男性の闖入者がもたらす恐怖的なものとしても表されている。でも、女性のまなざしから捉えている感覚があってもアケルマン、ポッター、カンピオン的なフェミニズムではなく、女性性はでていても、それ以上に、性別関係ない時代的なものをソフィアは表しているのだろう。秩序が乱れ、再び秩序を取り戻しても門の向こう、欲望が満たされないものによってしめくくられている。