個人的な体験

大江健三郎の小説「個人的な体験」はエンディングのエピローグ的なくだりが安易なハッピーエンドだとして、当時、三島由紀夫を始めとして批判する声が評論家の間でも多かったという。
私も、そういった批評があったことを知って、もう一度この作品について考えてみると、わからなくもないけどな、という気持ちではあります。
ただ、あのエンディングがあったから「不満足」とか「空の怪物アグイー」といった「個人的な体験」のスピンオフ的な短編が生まれたんじゃないか？と考えたら合点がいくというか。
特に「空の怪物アグイー」は「個人的な体験」のラストと対になってるような作品ですし。
あの時、違う選択をしていたら？の後日譚みたいな。
「不満足」は主人公であるバードの若い頃を描いた作品で、私は、こっちを先に読んだので「個人的な体験」のラスト近くでバードと菊比古が再会するくだりは感動的でした。
「スター・ウォーズ」に於けるエピソード1〜3みたいなもんかな。
というわけで、私は「不満足」「個人的な体験」「空の怪物アグイー」を三部作と捉えていて、3作品とも好きなので「個人的な体験」のエンディング肯定派です。
ちなみに大江本人は「個人的な体験」のエンディングに批判の声が多かったことに関しては気にしてたとのことで、後にコメントも出してるとか。
自分の息子が障害を持っていた子だったというモチーフの作品ということもあり、当時の状況を振り返っていました。
あのエンディングは、あれで良かったんだと。


本日の1曲はYMOの「MASS」です。
ヴォーカルはピーター・バラカン。