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2020年04月04日13:14

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ショートミステリー(5)刑事コランボ

コランボはロス警察でも有名な殺人課の腕利きの刑事だ。
ある日部長に呼ばれた。

「コランボ君、君のお陰でロスの殺人事件はめっきりと減った。そこでだ、君にこんな小事件を頼むのも気が引けるんだが、この奇妙な置き引き事件を調査してくれないか?」
「今のところは大した被害では無いんだが、今後も続くと目立つことになるんでな、早いうちに潰しておきたいんだ、暇つぶしに頼むよ!」

コランボは「やれやれこんなことまでやらされるのか?」と思ったが、調査してみると成程、確かに奇妙な事件だった。
被害者はいずれも突然現れた何らかの小動物に驚き、カバンを落とした瞬間に盗まれているのだ。従って被害者は犯人の顔は見ていないし、犯人に触れてもいない。

詳細に調査した結果、コランボはロス郊外に住む奇術師のジミーが怪しいと睨んだ。
よし、ジミーを現行犯で逮捕してやろう、とジミーの尾行を始めた。

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夜道を歩いていたジミーは誰かに尾行されていると感じた。
「いったい何者だ、俺を尾行している奴は?」
ジミーはこっそりと尾行者を確認した。

「げっ、あいつは殺人課のコランボ警部じゃないか!なんで奴が俺を尾行してるんだ?俺は殺人なんか犯しちゃいねーぞ」
「ふん、俺が奴の目の前で盗みでもやると思っているのか?俺はそんなヘマをするほど馬鹿じゃないそ!アハハ、お疲れ様なことだ」

とコランボを笑っていたその時、後ろでキャーという女性の悲鳴が聞こえた。
ひったくり事件が発生して、犯人らしき男がジミーの方向に逃げて来るではないか。

「ちっ、なんてケチな野郎だ、俺の模擬犯でもやろうってんのか?」
ジミーは無意識の内に胸ポケットにしまってあったゴム製の蛇をひったくりの犯人に投げつけてしまった。
蛇は犯人の首に巻き付き、犯人は驚いてひっくり返った。

ジミーは「し、しまった、コランボ警部の目前で種明かしをしてしまった、これじゃ現行犯じゃないか?なんて馬鹿なことをやったんだ、俺は!」と後悔した。

コランボ警部は追いかけて転んだひったくり犯人を取り押さえ「やれやれ、今日は盗人を2人も捕まえる羽目になったか」
と思い、取り押さえた犯人の顔を見た瞬間、「あっ!」と叫んだ。

そこにジミーが近づいてきて言った。

「コランボ警部、あんたにかかっては俺も形無しだ。潔くお縄を頂戴しますよ」と両手を差し出した。

警部はジミーの顔も見ずに暫く黙っていたが、、
「・・・あんたは何言ってんだ?俺はあんたなんか知らねーよ、さあ、捜査の邪魔だ!さっさと行きな」と言った。

ジミーは狐に摘ままれたようにきょとんとして、立ち去ろうとした瞬間、
「待てジミー、忘れ物だ!」と警部はジミーに蛇を投げつけた。
蛇がジミーの首に巻き付つくやいなや、コランボ警部はジミーを睨みつけ「もうやるんじゃないぞ!」と一言いった。

ジミーは今まで経験したことが無い、背筋が凍るような恐怖を味わった。

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次の日、コランボは部長に呼ばれて
「やあ、コランボ君、大変なお手柄だったね、時効寸前の強盗殺人犯を捕まえるとは!さすがだねー、所長もたいそうお喜びだ」

「・・・ところで、例の置き引き事件の方はどうだったかね?」
コランボは答えた。
「ああ、部長、あの事件はもう忘れてください。二度と起きやしませんよ。」












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