東欧某国の奥地の閉鎖的コミューンでひっそり暮らしていた吸血鬼たちが某大国の侵略とか諸々の事情でアメリカに亡命を申請。
ホワイトハウスにて「伯爵」がアメリカ大統領と会見を果たす。
「ブラム・ストーカーですか? 読みました。初版でしたから120年ほど前ですか。大変おもしろいお話でしたが、いささかオカルト趣味と東欧への人種的偏見がありますね」
紳士で善良、人類より善良かもしれない吸血鬼たち。
会見の生放送中、「ノーモア・コミュニスト!」と喚くなにか勘違いした狂人にショットガンで頭を吹き飛ばされるも、バラバラになった頭をジグソーパズルのように自分で組み立てて、首に載せ、喉元をハンカチでそっと拭うと元通り。
「赦しましょう。でもクリーニング代はいただきますよ(笑)」
この放送事故(?)で吸血鬼の人気が爆発。
ある人は頭を再生させる手付きを優雅なピアニストに例え、ある人は自分の頭を首に載せる場面をナポレオンの戴冠になぞらえた。
だが、誰もが連想し、誰も口にできない例えがあった。
衆人環視のなか、完膚なきまでに殺されて、なおかつ自力で復活した人物……
歴史上、ただ一人しかいないではないか。
そして「善良なる人外」の侵入は、世界を壊してしまうのか。壊れたあとに現れる新世界とは。
……という短編を書きかけて放っぽってあるんだけど、昨今の情勢でなんか書きにくくなってしまった。
『博士の異常な愛情』みたいな、ブラックユーモアな終末ものにしたかったのよ。
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