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2021年11月29日20:24

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「象の旅」

読書日記
「象の旅」
ジョゼ・サラマーゴ
 作
(書肆侃々房)

オーストリア大公への贈り物として、ポルトガルはリスボンから遥かウィーンまで旅することとなった象と象遣い。史実に基づいて描かれたサラマーゴ83歳のユーモア小説。

サラマーゴは以前読んだ「白の闇」の通俗性に比べると、こちらのほうがずっと良い。地の文とセリフが分け隔てなくひと続きで書かれているのも、気持ち良くスラスラと読める。

象と象遣いだけでなく、飼葉や水樽を乗せた牛が引く荷車と人足、護衛は馬で行く胸甲騎兵隊、途中からはオーストリア大公の馬車も加わって重量級の大所帯が、アルプスを越えてゆくのだから史実とはいえ面白くないわけがなかろう。

時代はルターが免罪符批判の張り紙を張り出してから30年。象を奇跡の演出に利用しようとするカトリック教会とルター派のオーストリア大公。その間で微妙な立場のインド人象遣い。これは気苦労だ。
雪中の行軍も死者続出の悲惨なものではなく、全員無事の平和な成り行き。計画されたミッションが功を奏した。ポルトガル領内では隊長、それ以降はオーストリア大公がリーダーとしてよくやっている。ひとつのプロジェクトに挑む一時的な小集団の物語として楽しく読める。
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