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2020年06月26日20:51

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「ダイヤモンド広場」

読書日記
「ダイヤモンド広場」
マルセー・ルドゥレダ 作
(岩波文庫)

バルセロナに暮らす一人の平凡な女性の半生。結婚し子供を産み、夫が飼い始めた大量の鳩を育て、お屋敷に出かけては家政婦として働く。やがて内戦となり夫は戦場へ。戦後の新しい人生を迷いながらも歩んでいく。

旦那は結婚前から昔ながらの男性優位主義っぽいところがあって、なんでも自分が決めるが仕事以外は全部彼女に任せっきり。まあ、そんなもんだろう。
話の半分までは大事件も起こらず、生活のひとつひとつが細やかに優しい文体で描かれていて、気持ち良く落ち着いて読める。そんな彼女たちの暮らしを追っているだけではわからなかったが、いつのまにか内戦の世の中となっていて、やがて夫は民兵となって勇んで戦場へ。ふだん通りの暮らしが変わらない間は内戦なんて感じられない。それがだんだんと仕事が途絶え、食べるものにも不足するようになってきてまさに戦争なんだとわかる。これは作品だからこその描写か、現実にそんなものなのか。彼女の人生は大きく変わった。

戦後新しい連れ合いと新しい人生が始まり、子供たちも青年に。そこまで進んでもかつての夫との生活の亡霊のようなものに苛まれる屈折した心情が痛々しく、日々無為に迷い歩くところが出色の出来だ。これはなかなか書けないと思う。そんな彼女が少しずつ過去を乗り越えて心の安定に向かうようすが、読んでいてほっとする。
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