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2020年06月20日21:03

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「資本主義に出口はあるか」

読書日記
「資本主義に出口はあるか」
荒谷大輔 著
(講談社現代新書)

社会の構造を「ロックvsルソー」の切り口で捉え直し、その歴史的変遷を明らかにする。はたして現代社会のあとにどんな社会を作ればいいのか?

かつて先頭を切って発達した名誉革命後のイギリス産業社会。ジョン・ロックの唱えた自由とジャン・ジャック・ルソーの掲げた平等の間を行き来してきた西欧近代社会が良く見える。そしてスミス、オウエン、マルクスまで「ロックvsルソー」の間で揺れ動く世界経済。といってもそれは学習である。まるでかつて民族的理想状態があったかのごとく、それを意識的に取り戻そうとするロマン主義の発達が個人的に興味深かった。

話題が現代社会に近づき、アメリカのリベラル対保守の話からネオリベラリズム、金融工学とリーマンショック、日銀の買支えとアベノミクスにまで進むと、理解も学習から離れ新聞記事を読むかのごとく活き活きと進む。はたしてわれわれの社会はこの後どんな出口へ向かうか?

ところが終章に入るとそれまでの経済的リアリズムの話とはうって変わって、デカルトの我を疑う哲学的な話になってしまう。映画「マトリックス」を例に、われわれが自明のごとく共有している枠組みを離れ、新たな社会のゼロ地点へいったん帰るべきだとの着地は、いつのまにか違う教室へ移動していたかのような終わりかただった。

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