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2020年02月18日20:22

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「新実存主義」

読書日記
「新実存主義」
マルクス・ガブリエル
 著
(岩波新書)

無世界主義で話題の著者が心腦問題の自然主義に対して反論。その限界とこれからのあたらしい哲学を提案する。

心や意識が腦のどこにあるのか、心とは腦の働きとして全て物理的に置き換えられるものなのか。この問題を解き明かしていくいわゆる自然主義の取り組みは、私がうっすら知っているよりはかなり先鋭的なようだ。著者が全力で反駁する内容を読めばその自然主義の限界も頷けるが、素直に言って内容的にはいまさら当たり前のような気がする。

なるほど腦科学がさらに進めば、意識のひとつひとつがニューロンのどのような発火と連なりによってもたらされているか同定することができるかもしれないが、だからといって機械的にニューロンが働いたから人間がなにかしらの概念を獲得したとはとうてい言えない。
人間の精神が概念を持っていることは、人間が自然主義に決定されることを超えて自由であり、人は自身で未来を選択することができる。

そんなことはあたりまえで、いくらニューロンと意識が厳密に同定されたからといって、例えば社会学や歴史学の種々考察が神経細胞から自動的に生まれたとは考えられない。まさかいまさら実存主義をリニューアルして論駁しなければならないほど自然主義とはトータルで拘束的な思想なのか。そのあたりが詳しくないので哲学の世界とは、こんなあたりまえのことを厳密に考えていかなければならないのかと驚いてしまう。
やはり無世界主義についての論稿の方を読んだほうが面白かったかとも思うが、やはりそれも同じようにフルアクセルで1m進むような徒労感があるかもしれない。向いてない。
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